特集

子どもの心を育て笑顔を広げる「楽器」の力。

(2019年4月4日号掲載)

子どもたちが楽器の楽しさや演奏する喜びを知ることは、音楽が好きになる、豊かな感性を育てるなど、心身の健やかな成長により良い影響を与えると言われます。「そのお手伝いをするのが当社の使命です」と語る、鈴木楽器製作所・グループ総務本部長の仲村圭司さんに、教育楽器や同社の取り組みなどについてお話を聞きました。

子どもの頃、音楽の授業で習った懐かしい楽器

教育楽器 その1鍵盤ハーモニカとは?

鍵盤ハーモニカは、ハーモニカ同様、息を吹き込み、リードと呼ばれる振動板を震わせて音を出します。学校の授業で使われるものは演奏がしやすく、持ち運びも便利です。

「教育楽器」とは文字通り、幼稚園や小中学校の音楽教育で使われる楽器のこと。皆さんもよくご存じのハーモニカやリコーダー、鍵盤ハーモニカなどが該当します。

では、こうした教育楽器はいつ導入され、普及していったのでしょうか。日本の初等教育における音楽教育は、明治時代に唱歌として始まりました。当時からオルガンやピアノなどの楽器が使用されていたものの、それはあくまでも教師の伴奏用でした。昭和16(1941)年に「国民学校令」が公布されると、それまでの唱歌に加え、器楽や鑑賞も音楽教育に含まれるようになりました。しかし、実際に器楽指導が行われたのは数少ない学校だったようです。

教育楽器が本格的に普及したのは、器楽教育が法的拘束力を持って実施された昭和33(1958)年頃からです。戦後の教育改革で推進されてきた楽器製造もこの頃には質の高い楽器の開発が盛んに行われ、全国で広く使われるようになりました。そうした教育楽器メーカーの1つが、地元浜松の「鈴木楽器製作所」です。

時代とともに歩む教育楽器づくり

教育楽器 その2ハーモニカとは?

息を吹いたり吸ったりしながら、リードを振動させて音を出す楽器です。幼稚園や小学校では、音階順の配列で、吹く音・吸う音がわかりやすいハーモニカが使われています。

鈴木楽器製作所は、多くの人に愛される楽器、ハーモニカに着目し、昭和28(1953)年に製作を開始したことから始まりました。それから8年後の昭和36(1961)年、創業者の鈴木萬司氏によって開発されたのが「メロディオン」の名称で知られる鍵盤ハーモニカです。

「当時の小学校ではハーモニカ中心の授業が行われていましたが、ハーモニカは楽器自体が小さく、音階もわかりにくいことから、先生方が指導に苦労していました。そこで当社の創業者が手軽に演奏できる鍵盤式のハーモニカを考案したのです」と仲村さん。その後も先生の指導のしやすさ、子どもの使いやすさを考えながら改良を重ね、今も多くの子どもたちに愛され、演奏されています。

こうした楽器の開発・製造で培われたノウハウを生かし、同社ではリコーダーや打楽器、電子楽器など、時代とともに多様化する音楽教育のニーズに対応しながら、さまざまな楽器を教育現場に送り出しています。

子どもたちの〝笑顔〟を喜びに、確かな製品を

教育楽器 その3リコーダーとは?

リードをもたない縦笛です。学校用リコーダーは小学校中学年~高学年で使われることが多く、指孔の間隔を狭めるなど児童の手にもフィットするような工夫が盛り込まれています。

「当社が扱うのは子どもたちが使う楽器ですから、安心して演奏することができるよう信頼性のある確かなものづくりを心掛けています」と語る仲村さん。そのために創業時からこだわり続けているのが、自社一貫生産です。中でもハーモニカや鍵盤ハーモニカなどのリード楽器は高度な加工精度が要求されるため、部品のレベルから素材を吟味し、一部を除きほとんどを自社グループで生産。もちろん製造工程においては、何度も厳しい検査を実施しています。

「当社の楽器を使うことによって、子どもたちが笑顔になること。それが私たち従業員の喜びですから、全員が気持ちを一つに、楽器の開発から製造、販売までを手掛けています」。同社は多くの社員が何らかの楽器を経験してきた音楽好き・楽器好きの集団。それぞれが情熱と誇りを持って仕事に取り組んでいます。

地元の小学校に新聞を寄贈

教育楽器の専門メーカーとして歩んできた同社ですが、大人が楽しめる鍵盤ハーモニカ「ケンハモ」をはじめ、大正琴や三味線、ハモンドオルガンのような幅広い年代に対応する楽器を製造するとともに、教室展開を実施しながら、音楽文化の普及・振興にも力を注いでいます。

そのほか、海外の子どもたちに楽器を贈る活動団体を通して、ハーモニカやリコーダーを寄贈したり、地域の小学生を対象に、工場見学を実施したり、また環境保全への取り組みとして、本社のある浜松市の地域清掃活動などにも参加しています。

さらには、今後新聞をよりいっそう授業に活用しようという文科省の方針に対応し、「少しでも子どもたちの学習活動のお手伝いができれば」と、同社では今春から近隣の小学校に、静岡新聞社と協力して、新聞を寄贈する取り組みを実施。楽器づくりを通じて、子どもたちの健やかで心豊かな成長に貢献するとともに、さまざまな形で社会貢献・地域貢献活動を行っています。

卓越した技術

精巧な金属部品を生み出すプレス作業
音の最終確認は1本ずつ人の耳で行う
2/1000ミリの精度を要するリード削り作業
自動調律器も使用し、リードの音調整を行う

地域・社会貢献活動

地域の清掃活動への参加
音楽文化の普及

創業者の精神

創業者であり、現・代表取締役会長の鈴木萬司氏が作詞したスズキグループの社歌には、教育楽器メーカーとして、"子どもたちの未来に「夢」と「創造」のカタチを贈りたい"という同氏の想いが込められています。

社歌「心はひとつ」より抜粋
一、
未来を担う 子どもらに
心をこめた 贈りもの
使命は 音色なり 誇りをもって
承け継ぐ遺産 大切に
グループ スズキ 心はひとつ
三、
ハードとソフト 織り交ぜて
そこに生まれる アイディア
創造は常なり 日々に新たに
進取の気性 保ちつつ
グループ スズキ 究めは続く

取材協力株式会社鈴木楽器製作所

事業内容/国内シェア40~50%を占める鍵盤ハーモニカや世界トップシェアを誇るハーモニカを中心とした多種多様な教育楽器の専門メーカー。

設立/昭和29(1954)年 所在地/浜松市中区領家2-25-12 TEL/053-461-2325

写真提供/鈴木楽器製作所