特集

2017年春 シルクロード・ミュージアム

ペルシアのイスラム陶器展 古の交易路が育んだ異国の工芸を訪ねて

(2017年3月9日号掲載)

磐田市にあるシルクロード・ミュージアムで、今月から「ペルシアのイスラム陶器展」が始まった。9~14世紀に作られた、色鮮やかな陶器が並ぶ圧巻の企画展だ。

5月31日(水)まで

東西文化が交じり合う遥かな国ペルシア

三彩刻線花文鉢

9~10世紀 径:26.5cm ニシャープール出土

【三彩】3色の釉を用いて描いて低火度で焼いた陶器。実際には3色以上使われることもある。ペルシア三彩では黄色、緑、黒、紫などがよく用いられる。

丸いキャンバスに描かれた、どこかコミカルでかわいい世界。ペルシア(イランの古称)で盛んに作られた陶器の数々からは、西アジア特有のモチーフと、東洋にも通じる繊細な色使いを同時に楽しむことができる。


シルクロード・ミュージアムでこの春始まった「ペルシアのイスラム陶器展」。館内には器や壺、水差しなど、最盛期(9~14世紀)に作られたペルシア陶器が約40点展示されている。同館は株式会社浜名梱包の私設博物館として2008年にオープン。展示作品の大半は、同社会長・鈴木鐵男氏が現地で手に入れた貴重な作品たちだ。


東は日本・中国、西は遥かローマまで。かつてユーラシア大陸にはシルクロード(絹の道)と呼ばれる、東西をつなぐ広大な交易ルートがあった。西遊記でおなじみの玄奘(三蔵法師)や、「黄金の国ジパング」をヨーロッパに紹介したマルコ・ポーロも、このルートを通じて異国の文化を自分の国へ持ち込んだのだ。


このルート上にあるペルシアの文化は、さまざまな国と交易を行うことで華やかな発展を遂げた。日本との関係も深く、奈良の正倉院にはペルシアから伝わった白瑠璃碗が保存されている。今回の展示品の中にも、東アジアの技法を巧みに取り入れた職人の技を垣間見ることができる。


例えば、中国で唐の時代に編み出された「三彩」。これは緑や褐色など三色の釉(うわぐすり)を使って着色を行った陶器のことだ。この技法をペルシアの人々は自国流にアレンジし「ペルシア三彩」を生み出した。ちなみに、三彩の技法は日本にも伝わり、奈良三彩として発展した。陶器一つとって見ても、シルクロードが世界各地に与えた影響力がよく分かる。


独自の技法がイスラム世界で花開いた

ラスター彩星形タイル

13世紀 幅:20cm カーシャーン出土

【ラスター彩】褐色の胎土に不透明の白釉をかけて焼成した後、金・銀などの金属を混ぜた顔料で絵付けし、低火度で再度焼き上げた陶器。表面に茶色がかった光沢が出るのが特徴。


ペルシアでは7世紀ごろからイスラム教が広まり、文化・芸術にも大きなインパクトを与えた。


イスラム教というと、厳格な戒律を持った宗教というイメージが強いかもしれない。例えば「偶像崇拝の禁止」。イスラム教では神様の姿かたちを絵で描いたり、彫刻に彫ったりすることは禁じられている。神様が作り上げたとされる人間や動物などを描くこともご法度。さらに当時の政府は金・銀器はぜいたく品として、作るのも使うのも禁止したのだ。


ところが、これが陶器職人たちの魂に火をつけた。ペルシアは元々ペルシア絨毯に代表されるように、おしゃれでエキゾチックな文化を持っていた土地。禁止令に反発した職人たちは、まるで金属のように陶器が輝いて見える制作技法「ラスター彩」「ミーナーイー手」を開発し、華麗な作品を作ることに情熱を燃やした。


さらには、人間や鳥、植物をモチーフにした絵も次第に描かれるようになり、表現豊かな陶器文化が花開いた。当時の人々はこれらを自宅に置き、実際に使ったり、飾ったりして色彩あふれる生活を送っていたという。


シルクロード・ミュージアムの顧問・田辺勝美さんは「土から作り上げる陶器は温かみがあり、見ていて心の癒やしにもなります。イスラム世界は日本人にとってなじみがないかもしれませんが、当時のヨーロッパにも影響を与えた高度な文化を持っていた地域だったのです」と語る。館内に並ぶ色とりどりの陶器たちは、きっとあなたを異国の旅に誘ってくれるはずだ。


緻密で鮮やか、ちょっぴりシュール。

青釉黒彩縦畝文壺

12~13世紀 高:16cm
カーシャーン出土

白地彩画鳥文三足鉢

10~11世紀 径:33.5cm
サーリー出土

緑釉掻落猛鳥文鉢

12~13世紀 径:17.5cm
ガルース地方出土

ラスター彩猟犬文タイル

13世紀 幅:10cm
カーシャーン出土

ラスター彩牛・アラビア文字文鉢

13世紀 径:12.3cm
カーシャーン出土

青釉貼付綱文四耳壺

8~10世紀 高:49cm
ゴルガーン出土(?)

黄地彩画鳥文鉢

10世紀 径:20.5cm
ニシャープール出土

一般社団法人 浜名梱包輸送シルクロード・ミュージアム

磐田市上野部888

  • 料 金/大人900円、中・高校生500円、小学生400円
  • 時 間/9:30~17:00
  • 休 館/月曜 ※祝日の場合は火曜
  • 問合せ/0539-63-5050
【創立8周年記念特別展】
  • 第1部 シルクロード・土の造形美術展
  • 第2回/ペルシアのイスラム陶器展~華麗な色彩の愉しみ~ 5月31日(水)まで
  • 第3回/2017年秋 インド、パキスタン、アフガニスタンの土器・陶器展
  • 第4回/2018年春 ペルシアから正倉院へ~ペルシア文化東方伝播~