暮らし

遠州のいきもの観察記 Vol.14

初夏の小さな宝石 セイボウ-青蜂-

(2018年5月10日号掲載)

メタリックに輝く青緑色のボディ

初夏、のどかな昼下がり。軒先に黒色のドロバチが静かに乱舞している。細いサイズの竹筒や、簾(すだれ)を束ねて吊るした物の周りに集まっているのだ。いつの間に湧いたのか?と思うほどたくさんだ。その黒い集団の中に、ときおり太陽の光に照らされて、キラッと青く光るムシがいる。ん?今のは何?と気になる光り方をする。

実はこれ、「セイボウ」という名のハチ。あまり馴染(なじ)みのない言葉だが、漢字では「青蜂」と書く。まさに青いハチなのだ。体長は、せいぜい1センチほどと、とにかく小さい!しかし、ひとたび、その存在に気付き、ボディをじっくり見てみると、深い青緑色の、メタリックに輝く美しさに、瞬時に心奪われる。jewel-wasp(宝石蜂)と呼ばれるゆえんだ。

セイボウと一口に言っても、実はたくさんの種類がいる。4月下旬〜5月にかけて見られるのは「ホソセイボウ」や「ナミハセイボウ」などだ。しかしどれも似ていて野外で見分けるのは困難だ。

ドロバチに寄生する

彼らは、ドロバチの巣に産卵する寄生蜂。ドロバチが現れる頃、同じようにセイボウも現れる。しばらくするとドロバチが簾の穴に巣作りと産卵を開始、幼虫の餌となるハムシやゾウムシの幼虫を巣へ運び始める。するとセイボウは、ドロバチの巣穴のすぐそばにとまり、様子をうかがい始める。ドロバチが出かけるのを待っているのだ。ドロバチがいなくなるとサッと巣穴に入り込み、中に産卵する。ドロバチが戻ってくる頃には、外に出て素知らぬ顔。その後、ドロバチは、泥を運び始める。巣穴に蓋(ふた)をするためだ。種類によっても違うが、セイボウの子供は、ドロバチの子供や運び込まれた餌となる幼虫を食べて育つという。産卵を終えたセイボウは、頑丈に蓋をするドロバチの作業を、しめしめと思って見届けているのだろうか。

かつて、農村部など茅葺(かやぶき)屋根の家がたくさんあった頃、こうした光景はよく見られたことだろう。今では、なかなかお目にかかることはない。ところが冒頭にあるように、周辺環境によっては、束ねた竹筒や簾などを軒先に吊るしておくと、こうした生きものがやってくることもあるようだ。今年は、こうした仕掛けを庭先に吊るしてみて、セイボウやドロバチの日常をゆっくり垣間見るというのも楽しいかもしれない。

取材協力 細田 昭博 氏

文・イラスト 環境学習指導員 瀬下 亜希