コラム

青木明子 アートの力 Vol.8

対話を通じて、多様な価値観に出会う。

(2017年11月9日号掲載)

「アートと言われただけで、思考停止になり目の前にベールが引かれた気になる」と正直に話してくれた友人がいます。私はこの友人からの話をヒントに、個人的なプロジェクトを最近始めました。「社会のどこでアートの力が発揮できるのか?」をテーマに業界、分野、領域を問わず様々な人と会って話をしてみる「ひとりからプロジェクト」です。

まだお会いできたのは数名ですが、「点在する観光施設をつなげられないか?」「野外施設の活用ができないか?」「地元の技術で新しいものが作れないか?」「イノベーションを生む人材を育てられないか?」など、さまざまな課題が出てきました。

10月半ばに静岡県文化財団主催「ふじのくに文化情報フォーラム2017秋」にゲスト参加者としてお誘いいただきました。ゲスト参加者20名を中心に一般参加者も加わり、80名ほどの多様な人が出会い、異なる価値観を対話で交換するフォーラムでした。

ゲストは文化・芸術界隈で活動するNPO、学芸員、演劇製作、建築家、映画館運営者、狩猟者、住職などのメンバーでした。私が対話した方は「演奏の場を作りたい」「英語のスキルを活かして文化・芸術に関わりたい」「自分と違う年齢や価値観の人と出会いたい」など、それぞれの思いを持っていました。20代の女性からは若い女性が首都圏に流出しないヒントをもらえたり、ビジネスマンからは企業のネットワークの利用方法を示唆してもらったり、多様なつながり方に興味が湧きました。

アートを鑑賞することも「対話」や「多様な価値に出会う」ことに似ています。ニューヨーク近代美術館MoMAでは「作品をよくみる。観察した物事について発言する。意見の根拠を示す。他の人の意見をよく聴いて考える。話し合いさまざまな解釈の可能性について考える」という鑑賞法が実施されています。その場で他者が発する言葉は、自分の価値観とは異なる多様で自由な言葉です。作品について聴き合うことで、他者への理解や新しい気づき、他者と共有したまなざしが得られます。

現在進行中の「ひとりからプロジェクト」は、アートの新しい価値に気づけるように進めたいと思います。どうぞ皆さまプロジェクトへご協力お願いします。