コラム

青木明子 アートの力 Vol.9

アートプロジェクトは地域を救う?

(2017年12月14日号掲載)

今年も札幌国際芸術祭、ヨコハマトリエンナーレ、近くでは、かけがわ茶エンナーレなど多くの芸術祭やアートフェスティバルが開催されました。

アートプロジェクトとは、アートから社会に様々な問いかけがあり、アートが触媒となって新しい社会づくりに向かうことだと私は考えています。アーティストは作品を制作するだけでなく、積極的に地域住民を巻き込んだり、社会的な課題に関わったりするプロジェクト型の表現活動を行います。

県外で行われた事例を2つほど紹介しましょう。

まずは大阪市西成区で活動するNPO法人「こえとことばとこころの部屋」です。西成区は、日雇い労働者や路上生活者の求職の場や簡易宿泊所がある地域です。団体はここに集まる人たちが語り合える場「小さな喫茶店ココルーム」を開きました。また、どのような境遇であっても学びたい人は誰でも参加できる「釜ヶ崎芸術大学」も企画され、絵画・音楽・哲学など、講師と受講者の壁のない学び合いの場となっています。

茨城県取手市の「取手アートプロジェクト」は、市内の団地にアーティストが同居し、新たな営みを生み出しています。この事業には、浜松で活動していたアーティスト・深澤孝史さんも参加しました。

彼の作品「とくいの銀行」は、住民の「とくい」を預かる銀行で、お互いの「とくい」を交換しながら団地の夏まつりやイベントを開いています。預けられる「とくい」は「あなたの話をききます」「くしゃみをします」「天体観測をします」など、私でも何か預けることができると思わせてくれるものばかりです。

2つの例はどちらも幅広い年代の住民が主役になり、地域独自の方法を発見しながら課題に向かい、新しい地域づくりに進んでいます。このような場では、アートの力を肌身で体験することができるでしょう。

来年は静岡県でも、2020年東京五輪開催に向けた「オリンピック文化プログラム」が実施されます。県のテーマは「地域とアートが共鳴する」です。一過性の文化イベントではなく、2020年以降も地域に残るプロジェクトになることを望みます。アーティストも市民もアートマネージャーも、想定外の出会いやトライ&エラーも楽しめるプロジェクトを計画したいですね。