コラム

藤原道生のスポーツマンシップ 講座4

リスペクトの精神を養う

(2018年2月22日号掲載)

これまで私はさまざまな国で、監督やコーチを務めてきました。その中で特にカルチャーショックを受けたのは、北米やアフリカなどの多民族国家へ行った時です。そこには人種や宗教、文化が全く異なる人たちが、お互いをリスペクト(尊重)しながら暮らしている姿がありました。

日本の場合、多くの人々が同じような生活スタイルを送っているので、はっきりと言葉にしなくても言いたいことが相手に伝わります。ですが、多民族国家ではそうはいきません。彼らは小学校のうちから、お互いの違いを理解した上で、ディベートの授業に取り組みます。お互い100%は共感できないという前提で、会話を進め、共通目的と協働意識を見出す技術を学ぶのです。

小さな子どもたちでもきちんとした議論ができるのは、相手の立場を認め、リスペクトし合っているからです。リスペクトする筋力を司るのは、大脳の前頭連合野という部分です。この場所は10代で成長が止まるといわれているため、子どもの内からリスペクトの精神を学ぶことが大切になります。大人になってしまってからでは、人間の性格を変えることは難しいのです。

私はこれまで、スポーツマンシップとは「選手がお互いにリスペクトし合い、ベストゲームを作ること」と解説してきました。こうしたリスペクトの精神は、スポーツだけでなく、音楽や演劇などの集団活動でも培うことができます。対人関係だけでなく、良い映画を見たり、面白い小説を読んだりした時に、「自分もこうなりたい」と感じることもリスペクトの一種です。

人口減少社会の中で、日本経済は転換期を迎えています。今後、海外の人が日本へ働きに来たり、日本人が海外へ働きに出たりするケースはますます増えてくるでしょう。その時、日本人は、文化の異なる海外の人々ときちんとした対話ができるでしょうか。将来を生き抜くために必要な「リスペクトの精神」を養うためにも、スポーツマンシップ教育は不可欠だと考えています。