コラム

青木明子 アートの力 Vol.4

かつてあった、中田島砂丘の美術展。

(2017年5月18日号掲載)

浜松で5月といえば「浜松まつり」ですね。今年も凧揚げ会場の中田島砂丘へ足を運ばれた方々が多くいらしたでしょう。

そんな中田島砂丘で、かつて美術展が開かれていたのをご存じでしょうか。私も実際は見たことがないのですが、在京中に知人から「浜松の砂丘に美術展を見に行った」と聞いたことがありました。

どんな美術展だったのか気になっていた矢先、以前アートセンターの展覧会に参加された写真家の山本糾さんが、当時の様子を撮影していたことが分かりました。さらに浜松在住の現代美術家にも尋ねたところ、彼女を通して美術展の事務局をしていた方から記録集をお預かりすることができました。

企画名は「浜松野外美術展」。1980年に今切海岸で始まり、1983~87年は中田島砂丘に会場を移して開催されました。砂の上に作り上げた立体作品や、砂丘を舞台にしたビデオ作品やパフォーマンスなどが出品されたようです。お金集めの段階から作家たちで行う、自身の制作姿勢を問い直すための実験的な展覧会でした。

ご存じのように中田島砂丘は潮風が強く、砂地のため、アート作品の展示に適した場所とはいえません。そんな悪条件の中で、作品を作り、展示する姿勢に私はアーティスト魂を感じました。参加作家の多くは浜松以外の方々でした。この美術展が地元・浜松の作家たちにもたらしたものは一体何だったのでしょうか?

そして彼らが挑んだ中田島砂丘の風景や自然環境が、防潮堤の建設によって変わっていく今、作品一つひとつを収めたこの記録集を前にして、人々に何を伝えるべきかを考えているところです。