コラム

青木明子 アートの力 Vol.5

大切なのは施設ではなく、人。

(2017年7月13日号掲載)

先月、山口情報芸術センター、通称・YCAM(ワイカム)から講師を招き、"アタマとカラダで考える「テクノロジー×学び」のデザイン"と題した講座を開催しました。これは浜松のアーティストやエンジニアたちが集まり、アートを通じて新たな発想力を生かしたエデュケーションプログラムづくりのプロジェクトです。

YCAMは2003年、山口県山口市に誕生した施設です。メディア・テクノロジーを用いた新しい表現の探求を軸に活動し、その過程で生み出された表現や学びを教育や地域資源の活性化に反映させています。坂本龍一、ライゾマティクスやチームラボのメンバー、大友良英、池田亮司、やくしまるえつこ、トクマルシューゴなどのアーティストともコラボし、国内外から注目されています。

鴨江アートセンターとの交流は、一昨年から始まりました。「アートとテクノロジーを掛け合わせたプロジェクトを始めるので協力してほしい」と勇気を振り絞ってメールしたところ、「YCAMの活動と親和性があるので協力します」という嬉しいお返事をいただけたのです。以降、プロジェクトのチームづくりに助言をもらったり、音を空間でとらえる「Walking around surround」というワークショップを小学生向けに実施したりしてきました。

YCAMの年間予算規模は、鴨江アートセンターの約25倍。施設・設備ともに、とても充実した施設です。館内を見学させていただいた時、私は思わず「鴨江アートとは比べ物にならない」と弱音を吐いてしまいました。ですが、ディレクターは「大事なのは人です」と言い切っていました。

YCAMには、専門分野を越えてプロジェクトが組めるメンバーが20名います。目を見張るのは、彼らのモチベーションの高さ。誰もが「世界に通用するものを作る」という視野の広さを持ち、「失敗は成功の20倍くらいある」とさらりと言ってのけます。そんな施設を支えているのは、人口19万人の山口市の市民だということも驚きです。

YCAMとの交流の中で、浜松にも才能や技術を持った人材が多くいることが分かりました。まずは彼らの力が発揮できる場と、機会を提供することができる施設になりたいと思います。