コラム

菊野教授の人づきあいの秘訣【第4回】

「○○できたら××あげる」は逆効果⁉ 報酬は子どもの意欲を低下させる

(2017年7月27日号掲載)

静岡産業大学教授 博士(心理学) 菊野春雄

子どもはなぜ勉強をするのでしょうか。親や先生に認められたいから勉強をする行動を「外発的動機づけ」といい、面白いから勉強をする自発的な行動を「内発的動機づけ」といいます。"学問は不得手だが趣味にはやたら詳しい人"のように、一般的に「内発的動機づけ」の方が有効だとされています。

「テストで○○点以上取ったら、好きなモノを買ってあげる」。子どもとそんな約束をした経験はないでしょうか。よかれと思ってやったことだとお察ししますが、実は「報酬を与えることは、結果的に学習意欲を下げる」ということが、アメリカのエドワード・L・デシという学者の研究によって立証され、今日では定説となっています。

デシの研究はこうです。学生をAとBの2グループに分け、パズルを解かせます。Aには解けたら報酬を与え、Bには与えません。Bは単純にパズルが面白くて解いています。数日後、Aに「今回は報酬を与えない」と言います。すると、Bはパズルを解こうとしますが、Aは解くことをあまりしなくなります。報酬はやる気をなくさせてしまいます。

言葉で褒めるのはOK

たとえば勉強嫌いだった子が、あるきっかけでコツを覚え楽しくなり、進んで学ぶようになったとしましょう。グングン成績が伸びたので、ご褒美に何かを買ってあげたとします。これは、せっかくの内発的動機(やる気)を外発的動機(報酬目的)にすげ代えてしまう可能性のある行為です。次回報酬がもらえなかったら、やる気をなくしてしまうかもしれません。専門的にはこれを「アンダーマイニング(土台を台無しにする)効果」と呼びます。勉強に限らずスポーツでも習い事でも、子どもが自発的に始めたことに対しては黙って見守るのが、一つの愛情といえるかもしれません。

ただし、褒めるのは大いに結構です。言葉で褒めることで、やる気をより強くすることを「エンハンシング効果」といい、これは"やればできるという自信を持たせる"ことにつながります。それに、報酬は与え続けられなくても、褒め続けることならできますよね。同じご褒美なら、モノより言葉の方が、子どもの将来のためにはいいのではないでしょうか。