コラム

菊野教授の人づきあいの秘訣【第5回】

生まれつき持った"気質"を知り 子どもに寄り添う余裕を

(2017年8月31日号掲載)

静岡産業大学教授 博士(心理学) 菊野春雄

育児をしていて「自分の育て方はもしかしたら間違っているのではないか」と悩んでいるお母さんはいないでしょうか。特に乳児期や幼児期のお子さんであれば、深刻になりがちです。

しかし、その原因がもし、よく夜泣きをするとか、かんしゃくをすぐ起こすとか、友だちと上手く馴染めないといったことが原因であるのなら、そう悩む必要はないかもしれません。なぜならばそれは「生まれ持った気質」である場合もあるからです。発達心理学では、生まれ持った先天的なものを"気質"、生活の中で育まれる後天的なものを"性格"と区別しています。今回は、育児の視点を少しだけ変える子どもの"気質"について、お話していきましょう。

アメリカの心理学者トーマス&チェスが100名以上の子どもを対象にした研究で、子どもの気質は3つに分類されると明らかにしています。全体の40%を占める、夜はぐっすりと眠り、いつも穏やかで聞き分けの良い「育てやすい子(Easy child)」。およそ10%いる、夜泣きが激しく気性も荒く、思うように食事をしないなどの「手のかかる子(Difficult child)」。15%は新しい環境などには不安や苦手意識があるが、睡眠や食事や機嫌などは比較的安定している「慣れるのに時間のかかる子(Slow to warm up child)」。そして残りの35%はどれにも属さない平均的な子です。あなたのお子さんはどれに該当しますか?

気質に合わせた育児が健やかな成長につながる

赤ちゃんの頃の気質は、10年後も65%の子どもに持続しているとこれまでの研究でわかっています。つまり気性の荒い子などに対しては「なぜこの子は」と悩んだりせずに、「この子はこういう子なんだ」とポジティブにとらえ気長に見守っていくほうが、育児にも精神的な余裕が出るのではないでしょうか。 また、トーマス&チェスは「子どもが健やかに育つか否かは"気質"と"環境"との適合が重要である」とも述べています。要は、親など周りの大人が生まれ持った気質を理解し、接してあげることが大切だということです。たとえばよく泣く子には「そんなことで泣かないの!」と無理に押さえつけるのではなく、それも個性の一つと考え、受け入れることが、よりよく健やかな成長につながっていくのかもしれません。