コラム

杉山孝男の人間学-28

「三つの人間修行法①②③」とは?

(2017年9月7日号掲載)

人間学読書会で「信号待ちの数十秒間はイライラ派ですか。それとも青空を楽しむエンジョイ派ですか」と質問しますと、前者が多数でした。

人間学は「人生の日々を充実する学問」ですから、信号の度にイライラするのでは、「修行不足の日常生活」に陥っていることになります。

修行は、反復行為により技や心を磨くことです。剣術の天才武蔵に「千日の稽古を鍛(たん)とし、万日の稽古を錬(れん)とす」とありますが、武蔵並みの『①努力鍛錬の人間修行』ができない人はどうしたらよいでしょうか。

今から半世紀前の十六歳の時、田舎育ちの筆者が下宿から初帰省した時に、街の火事現場の様子を母に報告しました。側で聞いていた父は、人様の不幸を得意気に話す息子に諭しました。「消防のサイレンが聞こえた時には、早く消えますように!救急のサイレンが聞こえた時には、病気が軽く済みますように!とそっと心の中で祈るのが人の道」と。

この気持ちを「惻隠(そくいん)の情(じょう)」と云います。尋常小学校出の父が、『②生活習慣での人間修行』の大切さを一言で息子に教えた凄さに驚きます。お蔭様で息子側も五十余年を経過した今でも、寝床でサイレンを聞けば直ちに惻隠修行となります。

次は『③自然摂理に学ぶ人間修行』です。武蔵の剛直修行に対し、弱さを柔軟な強(したた)かさに変える方法ですが、老子の名言「上善(立派な生き方)は水の如し。水は善く万物を利して争わず。故に咎(とが)無し」 (上善如水(じょうせんじょすい)の語源)が参考になります。

実は最近は人間修行面だけでなく災害対策面でも「自然摂理に学ぶ対処法」が評価され始めています。地球温暖化や原発事故の対策には、人為尺度を超えた長期対応が要求されます。人為の努力思想で災害をねじ伏せるのでなく、自然摂理に添った何万年単位の長期の対処法が必要と考えられ始めたからです。

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