コラム

藤原道生のスポーツマンシップ 講座2

ルールは何のためにあるのか?

(2017年12月28日号掲載)

スポーツが体系立てられたのは今から約150年前、19世紀のイングランドだと言われています。

当時のイングランドは世界中の至るところに、植民地を持っていました。そこで問題となるのは、これらの土地をしっかりとマネジメントできる人材の育成です。優秀なマネージャーをどうやって育てていくか?この課題を解決するため、国の指導者たちが目を付けたのが、パブリックスクールで行われていたフットボールでした。

パブリックスクールとは、エリートを育てるために作られた学校です。ほとんどが寄宿制の男子校で、10代の若者たちが共同生活を送る場でもありました。

当時、彼らの間で好まれていたフットボールは、寮対抗で行われ、相手チームの寮の玄関にボールを蹴り入れて得点を競うものだったそうです。玄関に並んで守る下級生を、上級生が張り倒してゴールを奪うなど、非常に野蛮でケガ人の絶えない遊戯でした。

指導者たちはこのフットボールを活用して、「ジェントルマンを育てよう」と考えました。そのために行ったのが、ルールの整備です。それまでは試合ごとにバラバラだったプレーヤーの人数、コートの大きさ、試合時間などを統一し、誰もが安心して取り組めるようにしたのです。ちなみに、最初に作られたルールは「シューズの先に刃物を入れないこと」だったともいわれています。

こうした後に、オフサイドなど、プレーを制限するルールを作りました。わざと不自由なルールを作ることで、それを乗り越えた時に、より大きな喜びを味わえるようにしたのです。結果、誰もが同じルールで試合を行うようになり、若者たちが自発的に競技に取り組んでいけるようになりました。

このような歴史の経緯を見ると、スポーツに取り組む上で「なぜルールを守らなくてはいけないのか?」という答えの本質が見えてきます。それは「楽しむため」です。みんなが楽しくプレーしようとすれば、ルールや審判、一緒にゲームを作る対戦相手を自ずとリスペクト(尊重)するようになります。英国の若者たちはフットボールを通じて「リスペクトの精神」を養い、マネージャーとして世界の国々へと送り出されていったのです。