コラム

青木明子 アートの力 Vol.10

アート×テクノロジーの可能性。

(2018年1月18日号掲載)

大正生まれの伯父は存命中、日本刀の美に魅せられ、収集していました。ある時、刀の手入れをしていると、切れ味を試したい衝動に駆られたそうです。伯父はその衝動に気づいた時、集めた刀を手放したと語ってくれました。

人をあやめる目的で製造された刀が、その本来の役割を伯父に呼び起こさせたのでしょう。この話を聞いた時、原子力などのテクノロジーの発展も、使用目的を誤ると人々を豊かにしないことに考えが及びました。

昨年12月9・10日、浜松市で音の可能性を探るイベント「サウンドデザインフェスティバル」が開催されました。鴨江アートセンターからも、地域で活動している技術者、ミュージシャン、アーティストたちで構成された4グループが出展しました。

その内の一つ、「f f f(ふふふ)」というチームは、絵や文字を「音」に変える作品を展示しました。 用紙に思い思いの文字や絵を書き、その用紙をセンサーにくぐらせると40音階の音に変換されて聞こえるという仕組みです。変換された音を聞いた参加者は、次々と描いた絵の音を楽しんだり、音を考えながら絵を描いたりしていました。

翌週は山口市で行われた「HELLO,YCAM!」に行きました。これは、テクノロジーと芸術の融合を目指して行われたイベントです。その中で見たものの一つに「The Other in You-私の中の他者」という作品があります。これはバーチャル・リアリティー(VR)を通して鑑賞者が仮想舞台に立ち、ダンサーと同じ舞台にいるかのように直近で鑑賞できるインスタレーションです。

時々、仮想舞台に自分の分身も現れ、その周りでダンサーが踊ります。魂を分身に吸い取られたような感覚になり、リアルな自分の存在が揺さぶられました。テクノロジーを使い、人間の感覚や身体の可能性を拡張するのが目的だそうです。

これら二つの作品には、人間が技術に合わせるのではなく、技術が人間に合わせて設計されているという共通点があります。このような人間に寄り添ったテクノロジーの発展は、決して人間を陥れたり、殺傷したりしないでしょう。アートとテクノロジーを融合させて生み出される作品や技術は、私たちに明るい未来をもたらしてくれると考えています。