教育

子どもに伝えたい遠州の民話(番外編)

学生たちが聞き歩いた「みさくぼの伝説と昔話」

(2017年2月23日号掲載)

水窪の民話をテーマに、静岡文化芸術大学の学生たちが聞き取り調査を続けている。4月には、水窪の民話を集めた第三弾となる書籍を刊行する予定だ。

静岡文化芸術大学・二本松ゼミの学生たち。3年生を中心に編集活動が行われている

浜松市の最北端に位置する山間の町・水窪。国指定の重要無形文化財「西浦の田楽」をはじめ、多くの民俗文化が残る地域として知られている。

そんな水窪に暮らす人々へ、伝説や昔話の聞き取りを行い、本にまとめている若者たちがいる。静岡文化芸術大学・文化政策学部、二本松康宏教授のゼミに所属する学生らだ。3年前から活動をはじめ、これまで水窪の民話をテーマにした書籍を二冊刊行。今年度は西浦地区など5地区で採録を行い、現在、第三弾の編集作業の真っ最中だ。

昨年5月から水窪に住むお年寄りたちを訪ね、地域に残る伝説や昔話を聞き歩いた。毎月2~3回は水窪へ足を運び、泊りがけで調査を行うこともあったという。

「印象的だったのは『椀貸し伝説』がいろいろな場所に残っていたこと」と話すのは佐藤妃莉さん(3年)。「椀貸し伝説」は全国各地に伝わる民話で、村人が川や池の主からお椀を借りるというお話。水窪の川辺の地域には、この民話が多く伝わっていることに気付いたという。

水窪の人に聞き取りをする学生たち。「子どもの時に聞いた昔話を思い出してもらうのは大変だった」という

「水窪の人たちは川と山の恩恵を受けて暮らしていた。川に対する関心の高さが、伝説・昔話にも現れているのだと思います」

学生による昔話の採録調査は1970~90年代にかけて盛んに行われていた。だが近年は高齢化・少子化の影響で昔話を語るお年寄りが減り、聞き取りの活動も下火になりつつある。

「高度経済成長期以降、生活スタイルが一変し、小説や映画などの娯楽も発達しました。今の高齢者世代でも、昔話を聴いて育った人は少なく、それを孫に伝えられる人はかなり少なくなってしまったのが現状です」と二本松教授は言う。

聞き取った話は、本人の口調や方言を正確に再現して文字に起こす。話の内容に加え、「語り」そのものが貴重な文化遺産であるという考えからだ。

「本にまとめることで、外部の人はもちろん、水窪に住む人たちが自分の地域のことを知る機会にもなると思う」と話す学生たち。現在編集中の「みさくぼの伝説と昔話」は4月に刊行予定だ。

これまで出版した二冊の書籍