教育

子どもに伝えたい遠州の民話(特別編)

会津の昔話を、遠州の子どもたちに。

(2017年4月27日号掲載)

【福島生まれの語り部・吉川艶子さん】

毎回、遠州の民話を紹介しているこのコーナーですが、今回は特別編。遠州地域で会津の昔話を語る、吉川艶子さんの活動を取材しました。

民話を語る会で、会津の昔話を披露する吉川さん

「じゃあ、聞いてくなんしょ。むかーし、むかしあったども。あるところになあ、天左衛門というおじいさんと、地左衛門というおじいさん、隣合わせに住んでいたと。それで、村の人たちは天左衛門だの地左衛門っていうには面倒だから、天福地福って呼んでいたそうだ......」

今年2月に袋井市月見の里学遊館で行われた「むかし話を語り継ぐ仲間のつどい」。遠州地域の語り部が民話を披露するこのイベントで、吉川さんは会津に伝わる昔話「天福地福」を語り始めた。大正15年生まれの91歳。会津弁でひょうひょうと語る様はどこかユーモラスで、客席からは幾度となく笑い声が上がった。

吉川さんは福島県喜多方市生まれ。昭和33年に夫の転勤を機に浜松へやってきた。夫が亡くなった平成6年に一端、実家の福島へ帰省したが、5年前から再び息子の住む浜松で暮らすようになった。

語り部となったのは20年ほど前から。福島に戻っていた頃、公民館で行われていた昔話の伝承活動に参加したのがきっかけだ。会津を代表する語り部・山田登志美さんに学び、地元の学校や高齢者福祉施設で昔話を語り回った。

「福島にいた頃は毎朝、小学校へ行って子どもたちに昔話を話していたけどもね。1つの話を聞かせると、子どもたちも面白がって『おばあちゃん、もっと話して』ってせがまれるのが嬉しくてね」

頭の中には50話以上の昔話が入っている。語り始めればもう止まらない。聴く者を、東北民話の世界へと引きずり込んでしまう。ちょっとくらい間違えても気にしない。「とちっても、しゃべり続けているうちに話が元に戻ってくる」と笑う。

福島時代は毎日のように語っていた昔話だが、浜松に来てからは話す機会が激減。時折、地域の行事などで語るものの、物足りなさを感じているという。

「昔話はどの地域にもあって、それぞれに違いもあるけど、同じところもある。どんなお話にも何かしらの道徳が入っているから、遠州の子どもたちにも聴いてもらいたいなあと思っているんだけどね」

浜松に移る時、師匠の山田さんから「語る場所があるなら、こっち(会津)の言葉でやりなさいよ」と励まされた。その言葉が、今も胸に残っているという。

◆吉川さんへ語り部の依頼をしたい人は053-479-5013もしくは080-4306-1743へ