教育

研究×青春 File4

ダヴィンチキッズプロジェクト「小さなアリの大発見」

(2013年1月24日号掲載)

全国の研究発表会で1位を獲得 専門家も知らない“防衛本能”を新発見!

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「なんて弱いアリなんだ」

今から2年前。ハダカアリの研究を始めた渡邊君は愕然とした。

アリの飼育には自信があった。小学生のころから、いろんなアリを飼ってきたのだ。中学に入り、理科の先生からハダカアリという謎の多いアリがいることを教わった。飼ってみたいと思った。

体長2ミリ程度。一般的なクロアリの半分にも満たないこの小さな生物を、名刺ケースで作った巣箱に入れて飼い始めた。

水分を与えようと霧吹きを吹いてみる。アリは苦しそうだ。水滴の中でおぼれていたのだ。

タンパク質を与えるため、ひん死状態の蚊をえさとして巣箱に入れてみる。蚊の逆襲に遭い、アリの方が死にかけた。

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――どうしてこんなやつらが今まで生き残ってこれたんだろう。

ある日、死んでいるハダカアリを発見した。標本にしようと作業を進めていると、肝心のアリの死骸がいつの間にか消えた。

「よく見ると、近くをうろついてました。死んだ振りをしてたんですよ」

こんなこともあった。巣箱に刺激を与えると、一匹のアリが別のアリをくわえて持ち運ぶのだ。「タクシー行動」と呼ばれるこの行為を、渡辺君は「常に外敵と2対1で勝負できる状況を作るためや、省エネのための行動」と推察する。

外に出ると、ハダカアリの巣の近くにはトビイロシワアリの死骸が積まれていることにも気づいた。

トビイロシワアリはハダカアリよりも体の大きな種だ。実験を繰り返すうちに、死骸を積むのは外敵が巣に近づかないようにするためであることを突き止めた。これは大人のアリ研究者も知らない新発見だった。

ちっぽけな生き物のDNAに刻まれた、驚くべき防衛本能の数々。先生から助言を得ながらまとめたレポートは、昨年11月に東京で開かれた「未来の科学者養成講座研究発表会」で全国1位を獲得した。

渡辺君は学校から帰ると、巣箱を机の上に置いてアリの様子をじっと見つめる。2時間が経ち、3時間が過ぎても観察はやめられない。

「研究を認めてもらえるのは嬉しい。でも、賞をもらうためにやっているわけじゃないんですよ」

アリの世界をのぞいている時の方が、その何倍も幸せなのだ。


kyouiku1301124C.jpg ダヴィンチキッズプロジェクトとは
ものづくり理科支援ネットワーク「浜松RAIN房」が行う、小・中学生を対象にした自然科学の研究支援事業。地元の子ども10名が理科教員の指導を受けながら各自テーマを設けて研究を進めている。