教育

研究×青春 File5

浜松工業高校電気研究部「エンジニア、野を駆ける。」

(2013年3月7日号掲載)

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浜工電気研究部は“運動部”だ。

1月21日。同部副部長の山岸功輝さん(2年)は、真冬の山道を駆け抜けていた。右手に地図、左手に“相棒”の受信機をつかんで坂道を走り続ける。乱れる呼吸とは裏腹に、両耳のイヤホンからは一定のリズムで信号音が鳴り響いていた。

「ARDF」というスポーツがある。森や山に設置されたTXと呼ばれる無線送信装置を探し、その発見数を競い合う競技だ。

TXを見つけるには、アンテナと一体になった受信機が必要だ。選手たちは受信機につないだイヤホンで、TXから発信されるモールス信号を聞く。信号音はTXが近くにあれば大きく、遠ければ小さく聞こえるため、音の強弱で位置関係を把握することができる。

無線機を使う関係から、浜工電気研究部がこの競技に参加し始めて8年。昨年は全日本大会で団体・個人ともに全国優勝の偉業を達成した。高校生の大会は4つのTXを2時間以内に探すルールで行われる。

山岸さんがスタートを切って20分が経過。信号音が次第に大きくなってきた。普通に考えれば、目標物に近づいているはずなのだが……。

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「本当にここにあるのか?」

そんな疑念が心から離れない。例えば、山頂に設置されたTXの電波は、周囲に遮るものがないため遠くにあっても大きく聞こえてしまう。TXの位置を特定するには、電波に関する知識と、地形を読む分析能力が要求される。

――自分を信じろ!

不安にさいなまれる中、そんな言葉が脳裏によみがえった。試合前、引退した3年生からもらったアドバイスだ。

「今までは途中で諦めて、近くにあるTXを見逃すパターンを繰り返していました。だから今回は全部のTXを探すことよりも、目の前の1個を見つけることに集中したんです」

誰もいない森の中で、探し続けること数十分。崖の下に隠されたTXを、ついに見つけた。

この大会で、山岸さんは3つのTXを発見。チームは5位入賞を果たした。「満足行く結果ではないけど、自分なりに少し成長できたと思う」。焦らず、1つずつ。人生にも通じる大事な何かが、得られたような気がした大会だった。

kyouiku130307B.jpg ARDFとは
Amateur Radio Direction Findingの略で「アマチュア無線方向探知」と訳される。フィールド内に設置された送信機を、小型受信機を用いて探索する競技。毎年7月に高校の全国大会、10月に一般も含めた全日本大会が開催されている。