教育

部活戦記

静岡県立 浜松商業高校・簿記部
簿記の女神は、勇者に微笑む。

(2013年10月3日号掲載)

1+2+3+4+5+…。静まり返った放課後の教室に、電卓のボタンを叩き続ける無機質な音が響く。
浜松商業高校簿記部の部活動は、いつも簡単な電卓計算から始まる。1から50までの数字を足したら、今度は反対に引き算で数字を減らしていく。戦いの前の、軽い指慣らしだ。

部長の山田佑菜さん(3年)は左手で電卓を叩きながら、目の前にいる「敵」を見つめていた。全国簿記電卓競技大会の過去問題集。それが彼女の、本日の対戦相手である。
「それでは、始め!」

顧問の先生の合図で、部員全員が問題集の表紙をめくる。山田さんも問題文に目を通した。冒頭の問題はこうだ。「札幌商事から室内用クーラーを購入し、68万8000円を普通預金口座から……」

試合中はなぎなたを打ち合い、ダイナミックな攻防が繰り広げられる分かった。答えは「借方=備品、貸方=普通預金、各68万8000円」。彼女は問題文の途中で、答えを用紙に記入する。制限時間は10分。それまでに、十数問ある問題を解かなくてはならない。文章を全部読んでいるヒマなんてないのだ。

企業の資産や負債を仕訳・計算し、決算書を作成するのが簿記の技術だ。浜松商業高校の簿記部は、資格取得のための勉強のほか、簿記技術を競い合う大会にも出場している。今年9月に行われた全国簿記競技大会では、団体競技・高等学校の部で優勝を果たした。

問題を解いている時の部員たちは、ほとんど「無」の状態に近い。問題文が目に入るのと同時に電卓を叩き、反射的に答えを導き出す。
「答えが本当に合っているかどうか、不安になったら負け。変に考えた時ほどミスが出ます。『自分は絶対大丈夫』と自信を持つことが大切なんです」

10分後。競技が終わり、どっと疲れがやってくる。だけど、すべての問題が解けたのは嬉しい。己を信じ続けた勇者にのみ、簿記の女神は微笑むのだ。

浜松商業高校簿記部
部員16人。山田佑菜さん、生馬美輝さん、鈴木優太さん、内田香澄さんの4名が出場した今年の全国簿記競技大会で2年ぶり3度目の団体優勝。個人成績も山田さんが1位、生馬さんが2位を獲得した。