教育

音の種まき 浜松市文化振興財団の挑戦

自分の思いを、楽器に吹き込む。

(2014年3月27日号掲載)

バンド維新で「宿望のチカラ」を披露する北星中学吹奏楽部。トロンボーンのソロが観客に新鮮な感動を与えた

3月9日。アクトシティ浜松中ホールでは、バンド維新の作品発表コンサートが行われていた。

北星中学吹奏楽部のトロンボーン奏者・鈴木英未さん(2年)は、仲間の部員とともにステージの上にいる。ただ、いつもと違うのは、自分が舞台の最前列に立ち、観客の注目を一身に受けているということだった。

世間一般における、トロンボーンのイメージとは一体どんなものだろう。トランペットやサクソフォンのように、際立った華やかさがある楽器ではない。鈴木さんが普段担当しているパートも伴奏が多く、メロディーを吹くことはほとんどないという。

ところが今回の演奏ではソロパート付きの主役に大抜擢された。トロンボーン奏者の村田陽一さんが、同校にトロンボーンをメインに据えたポップス「宿望のチカラ」を提供したのだ。公演前、鈴木さんは作曲者である村田さんからこんなアドバイスをもらった。
「楽譜通りに吹くのが正解なわけじゃないよ」

前日の公開レクチャーでは、作曲者の村田陽一さん(左)とソロ担当の鈴木さんが共演する一幕も

本当に大切なのは、自分がどんな風に演奏したいのかを考えることだという。その答えについて、彼女には一つ思い当たることがあった。
「村田さんの見本演奏を聴いた時、音が大きいわけじゃないのによく聴こえることに気づいたんです。音の大きさに強弱をつけるだけで、響き方に違いが出るなんてびっくりでした」

静まり返ったホールに、トロンボーン特有の哀愁ある音色が響き渡る。それに呼応するように金管・木管・打楽器が鳴り響き、曲はクライマックスへと収束していく。演奏が終わると、会場は拍手に包まれた。

「失敗しちゃったところもあったけど……でも、今まで演奏してきた中で一番楽しかった!」
ステージを降りた彼女は、緊張から解き放たれた表情でそうつぶやいた。

◆バンド維新とは

2008年から行われている浜松市文化振興財団主催の音楽イベント。日本を代表する作曲家の新曲を、浜松市内の中学・高校生が公開初演する。曲は小編成のウインド・アンサンブル。前日に作曲者による公開レクチャーも行われる。