教育

柳田泰山・金澤翔子 師弟書展

(2014年5月22日号掲載)

歩んだ人生によって、見え方が変わる。それが書の面白さなのです

今回、龍雲寺さんの本堂のふすまに阿弥陀経を書かせていただいたご縁で、師弟展を開かせていただきました。普通、書道界では師弟展ってやらないんですよ。作品の出来を見比べられちゃうから(笑)。でも、今回は大勢の人に見ていただいて、やって良かったと思っています。

金澤さんが書いたNHK大河ドラマの題字


柳田泰山さん(左)と話をする金澤翔子さん

我々は書を書くとき、「うまく書こう」と思ってしまいます。だけど翔子ちゃんは、うまい下手を考えて書いてないんですね。彼女にとっては、みんなに喜んでもらうことが一番大切。だから人を感動させる書が書けるのだと思います。

私が翔子ちゃんと出会ったのは、彼女が10歳ぐらいの頃です。初めて会った時、彼女は正座をして、ごく自然に頭をぺこりと下げたのを覚えています。お母さんがそういう教育をしてきたということですね。親から子へ、人として大切なことを受け継いでいく尊さを感じます。

先代である僕の父親は、とても厳しい人でした。だから、僕も厳しい教え方しかできません。ダウン症のある子に対しても、それは同じです。翔子ちゃんには筆の持ち方から始まり、半紙に10本の線をきれいに引く訓練を徹底的にやりました。その成果が今の作品にも生きていると思っています。

私の父は「書は分かる人にだけ分かればいい」という考えの人でした。でも、僕らは大事なことを若い世代へ伝えていく努力をすべきだと思います。よく皆さんから「書はどんなところに注目したらいいのですか?」と聞かれます。これは難しい質問ですが、「良い書」というのは見ている人によって違うものなんですね。各々が歩んできた人生によって、見え方が変わる。それが書の面白さなのです。

柳田泰山(やなぎだ・たいざん)
1950年、書家・柳田泰雲の四男として生まれる。江戸時代から続く柳田家の四代目。中国・浙江省紹興市紹興文理学院・蘭亭書法芸術学院の客員教授に就任。後進の指導にあたる傍ら、日中文化交流の一端を担う。
金澤翔子(かなざわ・しょうこ)
1985年生まれ。5歳から書道を始め、母・泰子とともに柳田泰山に師事。2005年、銀座書廊で初の個展を行い、建長寺(鎌倉)、建仁寺(京都)、東大寺(奈良)などでも個展を開催。2012年、NHK大河ドラマ「平清盛」の題字を担当した。