教育

第2回 聖隷クリストファー大学 教授 古川和稔さん(医療福祉学)

(2014年10月2日号掲載)

全国の介護施設で「おむつゼロ」を達成

元・芸人の大学教授「本当の笑顔を追い求めたい」

古川和稔さん――介護の研究ってどんなことをするのですか?
古川 現在、特別養護老人ホームに入りたくても入れない高齢者が、全国に52万人いるといわれています。今後も高齢者は増え続けていきますが、国も財政が厳しいので施設の数が劇的に増える見込みはありません。この大きな問題をどう解決すべきかを考えるのが、主な研究テーマです。

――切実ですね。どうすればいいでしょうか?
古川 方法は二つあります。一つは自宅で介護を受けている高齢者が、施設に入らなくてもいいぐらいに健康になること。もう一つは、施設に入っている高齢者が元気になって、自宅で生活できるようになることです。

車いす生活だった利用者が、自立支援介護を受けて4カ月後にはシルバーカーで歩けるようになった

――そんな簡単に元気になれるんですか?
古川 人間の体って使わないとどんどん衰えていくんですよ。例えば足腰が弱くて歩けない人がいるとしますよね。この人を車いすに乗せて移動のお手伝いをするのが、今までの介護の考え方です。ただ、これだと足腰の筋肉がさらにやせ細ってしまう。

――手厚いケアが逆効果になっているということですね。
古川 ええ。一方、利用者にはできるだけ自分の力で動いてもらい、身体機能を回復させるのが、これから必要になる自立支援介護の考え方。食事や水分をしっかりと摂り、適度な運動をすることで身体機能は驚くほど向上するんですよ。全国の介護施設でこうした取り組みを行った結果、利用者のおむつ着用率が0%になった施設が70カ所も生まれました。

――介護研究のやりがいはどんなところにありますか?
古川 実は私、元・お笑い芸人でして。電撃ネットワークの2軍などに所属していたんですが、まったく売れず、27歳で介護の道に入ったんです。お笑いも介護も人を笑顔にするという意味では同じです。ただ、ギャグが面白くて笑うのと、「自分でまた歩けるようになって幸せ」と言って笑うのでは意味がずいぶん違う。あきらめていた人生を取り戻した時に出る笑顔。これこそが、僕ら介護の人間が追い求めなきゃいけない笑いだと思っています。