教育

悉平太郎から、 地域の未来を考える。

(2015年1月8日号掲載)

野生の猿と共存を

鳥取環境大学の論文コンクールで大賞受賞した谷口さん。 中央大学のコンクールにも佳作入賞した

「どうして磐田に猿が現れたんだろう?」。ふとした疑問が、論文制作のきっかけだった。2年前、磐田西高校の近くの民家で、女性が野生の猿に噛まれる事件が発生。市街地に猿が現れたことに驚きを感じ、谷口さんは静岡県の野生動物による被害を調べ始めたという。
「猿による被害は2000年代に入って急激に増えていることを知りました。調べるうちに、猿の好物がみかんであることも分かりました」

実は1970年代前半まで、磐田はみかんの栽培が盛んな土地だった。地元の農家が茶畑の間の低地を活用し、みかんを育てていたという。ところが1973年をピークに収穫量は減少。放棄された果樹園のみかんが野生化し、猿の格好のエサ場となったと考えられる。
「どうしたら野生動物と共存し、豊かな地域を作ることができるのか。そのヒントになったのが、悉平太郎の伝説でした」

耕作放棄地を牧場に

表彰式では大勢の前で自分の論文をプレゼンテーションした

見付天神に伝わる悉平太郎の銅像

悉平太郎は、磐田市見付地区に伝わる伝説の霊犬。村人を苦しめていたヒヒ(猿)の怪物を悉平太郎が退治する物語から、「昔は他の動物が、猿による被害を防ぐ役割を果たしていたのでは」と思い至った」

「例えば北海道では、子ヤギのレンタルが行われている牧場があります。ヤギは草を食べますが、草がなくなると野生動物は山から下りにくくなるようです」

地域の耕作放棄地を牧場にすることで、野生動物の被害を防ぐことができる。また、放牧をすることで、牛乳やバターといった酪農製品を地産地消する社会も作り出すことができる。農業用水、上水道を活用して小水力発電を行えば、電気までも地域で作り出すことが可能だ。以上のことを「昔話を手掛かりに地方都市の未来を考える」と題して論文にまとめたところ、審査員から大きな評価を得た。

「悉平太郎伝説は、地元の人なら誰でも知っているお話。昔話をヒントにして、地域の自然保護や産業を考えることができました。今後は海外のことなども学んで、地域に貢献していきたいです」