教育

花鳥風月-今月の自然

藤(ふじ)

(2016年4月7日号掲載)

美しい花、たくましいツル

野田九尺フジ

日本で一番多い苗字といえば、ご存じの通り「佐藤」さん。ほかにも、加藤、斎藤、伊藤など、「藤」の付く苗字は数えきれないほど存在する。

これらの多くは、奈良・平安時代に隆盛を誇った藤原氏がルーツ。大化の改新を進めた中臣鎌足(なかとみのかまたり)が、その死の前日に天智天皇から「藤原」の姓を送られたのがそもそもの始まりだ。

藤は古くから日本に自生する、ツル性の植物。単体では自立できないため、ほかの樹木などに巻き付いて成長し、4月の中頃を過ぎると房状の花を咲かせる。とても生命力の強い植物で、なんと1年で10m以上伸びるといわれている。花房も長いもので1mをゆうに超える。

野田白フジ(昭和白フジ)

藤は現代人にとっては、あくまで観賞用の花。しかし、古代の日本では非常に特別な意味を持った植物だった。というのも、藤のツルは当時最強のロープとして使われていたからだ。古代人は立派な宮殿を築くため、丈夫な藤ヅルを使って巨大な石や木材を引っ張ったのだ。現在でも長野県・諏訪神社の御柱を山から降ろす際には、藤のツルが使われているという。

つまり藤原の姓には、土木工事を司る権力者という意味が込められているというわけだ。藤は「不死」「不二」「富士」にも通じ、不滅の生命を表す言葉と考えることもできる。この春、藤の花を愛でる時は、たくましいツルにも注目してみよう。

藤の花風の序曲となりにけり笹瀬節子(みづうみ主宰)
野田紅フジ

枕草子の一節に「藤の花はしなひながく 色こく咲きたるいとめでたし」とある。しなやかに垂れた花房が色濃く咲く様に、清少納言をはじめ多くの古人が魅了された。揚出句は川風に揺れる藤浪に、惜春の思いを詠んだもの。平安の昔から変わらぬ美しさに今年も出会えると思うと心ときめく。

【取材協力】はままつフラワーパーク理事長 塚本こなみさん
はままつフラワーパークは6月12日(日)まで浜名湖花フェスタを開催中。藤の花は4月下旬からゴールデンウィークまでが見頃。野田フジや白フジなど約7種類の藤が楽しめる。