教育

花鳥風月-今月の自然

花菖蒲(はなしょうぶ)

(2016年6月2日号掲載)

江戸時代に大人気だった花

5月下旬から6月の半ばにかけて見頃を迎える花菖蒲。すっと伸びた茎と優美な花びらを持つ、梅雨を彩る花の一つだ。青紫や赤紫が代表的な色だが、白やピンク、黄色など明るい色の花をつけるものもある。

花菖蒲は古くから日本人に愛されてきた花だった。江戸時代になると品種の改良が盛んに行われ、浮世絵にも登場するほどの人気ぶりを獲得。その結果、「江戸系」「肥後系」「伊勢系」と呼ばれる3種類の系統が誕生した。

加茂荘の廊を渡り、花菖蒲に見入る。色は紫、白または黄色も良い。江戸の世から大名はもとより、庶民に至るまで親しまれている優美な花は、ひと時を忘れさせてくれる。 折から青葉の風に、この世の楽土にいる思いがする。

「江戸系」は江戸の武士や庶民が観賞するために栽培された品種たち。庭園にたくさんの花菖蒲を植え、群生の美しさを楽しむのが江戸っ子たちの観賞法だった。

「肥後系」は現在の熊本県で育った品種群。花菖蒲の観賞は武士のたしなみとされ、室内で一つひとつをじっくりと眺める文化が発展した。また、花の芯は「心」につながると考えたため、芯の形が端正なものが素晴らしいとされた。

同じく「伊勢系」も、屋内や日蔭に並べて楽しむために栽培された品種たち。花びらが優雅に垂れる様を観賞したという。現在の花菖蒲は、これらの品種群が掛け合わされ、さまざまな形や色をした花々が生み出されている。

ところで花菖蒲と似た植物に、アヤメとカキツバタがある。「いずれアヤメかカキツバタ」の言葉通り、これらの花は見た目がそっくり。姿形で見極めるのはかなりの難易度だが、アヤメは乾燥した場所、カキツバタは水の中に根を張り、花菖蒲は水辺に近いところで育つという違いがある。観賞の際は、生息している場所にも注目してみよう。

【取材協力】加茂荘花鳥園
掛川市原里110 ☎0537-26-1211
花菖蒲は6月中旬までが見頃。8月まで水鳥ふれあいエリアがオープン中で、無料でえさやりが楽しめる。6月20日~8月31日は昆虫展も開催。小学生以下の入園料は無料。