教育

花鳥風月-今月の自然

茸(きのこ)

(2016年10月6日号掲載)

収穫しても同じ場所に生える

山間の街道を歩いていると、道沿いに道祖神を見つけた。そばには初茸が生えている。秋の香りを誰よりも先に味わい、心の中で笑っている道祖神の姿を詠んだ。

マツタケ、シイタケ、シメジ、キクラゲ......。秋は茸が旬を迎えるシーズン。野山に行けば多種多様な茸を観察することができる。愛くるしい形をしているのもあれば、奇妙で毒々しい見た目を持つものも。その種類は数万に及ぶともいわれている。

生活に身近な存在である茸だが、その正体を一言で表すのは難しい。茸はカビと同じく菌類の一種で、植物ではない。だから光合成もしないし、二酸化炭素も吸い取らない。その代わり、植物や昆虫の死骸、糞などに取り付いて、養分を吸収。分解して土に還す役割を担っている。 茸というと森の中に生えているイメージが強いが、実際は養分になるものさえあれば、草地や河原、グラウンドなど、どこにでも発生する。コンクリートの上で成長する種類だってある。どうやって繁殖するのかというと、茸のシンボルともいえる傘に秘密が隠されている。

もし茸を見る機会があったら、傘の裏側を観察してみよう。ヒダがあったり、スポンジ状の穴が開いていたりするものが多いはずだ。茸はここから胞子をばらまく。風に乗って散らばった胞子は、生育に適した場所に付着して発芽。養分を吸収し、増殖していく。種類ごとにお気に入りの場所があり、例えばマツタケはマツ林の樹下で成長することが多い。

ここで衝撃的な事実を紹介。なんと茸の本体は、普段我々が食べている部分ではない。その証拠に、地面や樹木に生えている茸を収穫しても、年月が経てば同じ場所に同じ種類の茸が生えてる。茸の本体は菌糸(きんし)と呼ばれるもので、普段は地面や樹木の中に埋まっている。菌糸が生き続け、なおかつ栄養分がなくならない限り何度でも再生可能なのだ。

さて、茸狩りのシーズンで気を付けたいのは毒キノコの存在。食べられる茸と食べられない茸、この二つをひと目で見分ける方法はない。素人目で判断しないようくれぐれもご注意を。

【取材協力】武藤治彦さん
静岡県立森林公園ビジターセンター「バードピア浜北」

浜松市浜北区尾野2597-7 053-583-0443

10月14日(金)まで「怪しいきのこ、冬虫夏草写真展」を実施中。昆虫に寄生するキノコ「冬虫夏草」をテーマにした写真・標本を展示する。8日(土)は専門家による解説もあり。入場無料。また、8・9日は森林公園のボランティア会員募集のための説明会も行われる。