教育

子どもに伝えたい遠州の民話(1)

ホウジ峠の地蔵様 -浜松市天竜区佐久間-

(2016年10月13日号掲載)

遠州地方は民話の宝庫。このコーナーでは、子どもに伝えたい地元の民話を、語り部が紹介します。第1回は、やまんばの会代表・小嶋直美さんによる「ホウジ峠の地蔵様」です。

そまさの木を切る斧の音が、ある日突然、聞こえなくなってね...。

語り部・小嶋直美さん(やまんばの会代表)

ホウジ峠に飛騨の国から一人のそまさ(木こり)が出稼ぎにやってきて、いつも木を切ってたんだって。峠の近くに野田っていう集落があるんだけど、そまさは野田の人たちと仲良くなってねえ。子どもらと相撲をとったり、祭りの日には村の衆とお酒を飲んだりしてただって。

とっても働き者のそまさでね。稼いだお金を、いつも腰につけて仕事をしてただって。毎日休みなく、朝早くから日が暮れるまで、そまさが木を切る音が「カーン、カーン」って集落に響いてただって。

ところが、ある日。朝から晩まで、そまさの斧の音が聞こえん。「あれ、今日はそまさ、休んでるだかね」と、野田の衆は言っとったけど、次の日になっても、その次の日になってもやっぱり聞こえん。野田の衆が心配になってね。そまさの小屋を訪ねていっただって。

そうしたら、小屋の中が荒らされて、そまさがバッタリ倒れて息絶えておったんだって。こりゃきっと、物取りのせいに違いない。そまさがいつも腰に付けてた袋を探してみたけど、やっぱりなくてねえ。「木曽におる、そまさの家族の衆にこれを知らせてやらにゃいかん」って言って、野田の若い衆何人かで木曽に向かったんだって。

四日ぐらいかけて、やっとこ木曽までたどり着いた。人に尋ねてそまさの家を見つけたら、子どもが大勢おってね。おっかさんに知らせると「正月には帰ってくると言ってたから、それだけを楽しみに頑張っておっただに」と泣き崩れただって。

あまりの痛ましさに、野田の衆もその場におれんくなって、早々に帰ったんだけどもね。「良いそまさだったね」とみんなで時々話をしていたんだけども、それからしばらくしたら誰が建てたんだか、そまさの小屋のところにお地蔵様が建った。いつも青しばが供えてあってね。誰が祭ったのかは分からないんだけどね。

この地蔵様は今もあってね。峠でそば屋をやってる衆は、お客がいない時によくお参りしてるんだよ。拝むと、じきにお客さんがやってくる、不思議な地蔵様なんだよ。

ホウジ峠にある地蔵。道行く旅人を見守っている

10月15日(土)午前11時~午後8時、佐久間民俗文化伝承館(浜松市天竜区佐久間町佐久間1832-1)で民話の里イベントが行われる。遠州各地の語り部が集まり、それぞれの地域の民話を語る。053-987-1888