教育

子どもに伝えたい遠州の民話(3)

天狗になった芝村の小太郎 -袋井市浅羽-

(2016年12月22日号掲載)

遠州地方には不思議な民話がたくさん残っています。今回は、袋井むかし話の会・原田伴子さんによる「天狗になった芝村の小太郎」のお話を紹介します。

ある夜、枕元に天狗が現れました。それはなんと小太郎でした。

語り部・原田伴子さん
(袋井むかし話の会)

昔、芝村(現在の浅羽)の庄屋、河村平馬の子どもに小太郎という少年がいました。小太郎は小さい頃から笛が上手で、暇を見つけ ては木に登って笛を吹いていました。小太郎の笛のうわさは広く知れ渡り、近くの村々から笛吹きとして頼まれて出かけていくほどでした。

その小太郎がある日、突然いなくなってしまいました。小太郎は「小笠山の天狗・三広坊は笛が好き」という話を前から聞いていて、三広坊の神前に笛を奉納したいと思っていました。その思いが募り、両親には何も言わずに小笠山へと登ったのです。

小太郎は険しい山道を登り切り、頂上の拝殿にたどり着きました。そして、神前で笛を吹き始めました。笛の音が山に響き渡り、しばらくすると、社の中から天狗の三広坊が姿を現しました。

「お前は笛が上手だのう。聞いていて感心した。どうだ、今から天狗になって、この小笠山に住む気はないか」

「天狗は死なない」と聞いていた小太郎は、なってもいいと思いました。ですが、ひとまず家に帰り、両親と相談したいと天狗に告げました。

「いや、両親は許してくれないだろう。この拝殿に7日の間こもって修業に励め」

三広坊に強く勧められた小太郎は、思い切って天狗になる覚悟を決めました。7日間修業に励んだのち、山の中でさらにつらい修業を積みました。それを何年か続けていると、三広坊から認められ、「天狗多聞天」の名をもらうことができました。

一方、小太郎の両親は、何年経っても家に帰ってこない息子を心配していました。そんなある夜、父親の平馬の枕元に天狗が現れました。それはなんと小太郎でした。小太郎は天狗になった経緯を父親に話し、こうお願いしました。

「病気やケガで苦しんでいる人を助けるために、小笠山の山中に神社を建ててほしいのです」

次の日、平馬は家族や近所の人たちに夢の話をしました。平馬は大勢の人たちと小笠山にこもり、三広坊本堂の西に多聞天神社を建てました。

その後、村に病人が出ると多聞天が夢に現れ、薬の作り方や傷の治し方を教え、大勢の人を救ったといわれています。

芝村の小太郎こと多聞天は、今も小笠山の山頂付近にある多聞天神社に祀られている
袋井むかし話の会  地元の民話や歴史話を掘り起こし、次世代に伝承するため、平成11年に創設。子どもたちに向け、演劇や音楽の要素を取り入れた「立体朗読劇」を披露している。