教育

子どもに伝えたい遠州の民話(4)

雄鯨山・雌鯨山(おくじらやま・めくじらやま) -掛川市日坂-

(2017年1月26日号掲載)

遠州地方に残る不思議な民話の数々。今回は掛川歴史教室「民話を語る会」の鈴木敏子さんが「雄鯨山・雌鯨山」を紹介します。

「仕方がない。姫をさらっていこう」鯨は大きな体でお宮を取り巻きました。

語り部・鈴木敏子さん(民話を語る会・代表)

ある日、日坂の事任(ことのまま)八幡宮に、竜王が遊びに訪れました。竜宮からやってきた竜王は、碁が大好き。八幡様と竜王は、碁盤を出して朝から夢中になって遊びました。

何日経っても碁が終わらないので、 八幡様の娘が様子を見にやってきて、「竜王様もお父様もずいぶん楽しそうですね」とあいさつをしました。

姫のあまりの美しさに、竜王は碁を忘れて見とれました。竜宮に帰った後も、姫のことが忘れることができません。どうしても嫁にしたいと考えた竜王は、二頭の鯨を呼びました。

「雄鯨と雌鯨よ、私の使者として八幡宮へ行ってくれ。そして姫を嫁にもらってきてくれ」

二頭の鯨は遠州灘から太田川を上り、八幡宮を目指してぐんぐん進んでいきました。この時、川の水は逆に流れ、人々はとても驚きました。八幡宮の近くを流れる川を逆川(さかがわ)と呼ぶのはこのためです。

お宮のすぐそばまで来ると、川はすっかり浅くなりました。塩気が欲しくなった鯨たちは、川底を尾でポンポンと打ちました。すると、竜宮から潮がビューと送られてきました。そこは今でも汐井川原と呼ばれ、塩水が噴き出す場所になっています。

八幡宮にたどりついた鯨たちは、竜王の言葉を伝えました。すると八幡様は目の色を変え「いやいや、たとえ竜宮殿の頼みでもこれだけは無理じゃ」と断りました。

困った鯨たちは「仕方がない。姫をさらって行こう」と大きな体でお宮を取り巻きました。八幡様は抵抗して、大切な碁石を鯨たちの目に投げつけます。二頭の鯨は暴れまわり、辺りはものすごい地鳴り、黒雲が走り、真っ暗闇になりました。

八幡様は雷を呼び、鯨をやっつけました。姫を隠した山の村の辺りは、七日七晩、真っ暗闇になったことから「くらみ(くらやみ)」と呼ばれるようになりました。鯨はそのまま岩石になり、連なって大きな山になってしまいましたとさ。

雄鯨山・雌鯨山の伝説が残る事任八幡宮。近くには逆川が流れる