教育

椿(つばき)

(2017年2月2日号掲載)

日本の暮らしに根付いた花

枝から離れた椿の花は、上を向いて地に落ちる。樹の根元に身を投じた赤い花。枝に付いて葉に隠れていた頃よりも、不思議と生命力を感じさせる。

椿の花はボトリと落ちる。この様子が「首が落ちる」ことを連想させるため、武士の間では縁起が悪いといわれることもあったようだ。

しかし、椿の花が丸ごと落ちるのには、わけがある。椿のおしべは筒状になっていて、この根元に花びらがくっついて離れないようになっている。筒状のおしべの中には蜜が詰まっていて、外にこぼれないようになっているのだ。

冬から春先にかけて咲く椿は、受粉の媒介者である昆虫が少ない。そのため、メジロやヒヨドリたちが花粉を運ぶ担い手となる。おしべが筒状になっているのは、鳥たちが蜜を吸う時、頭部に花粉が付きやすくするための工夫なのだ。

特徴的なのは、花だけではない。葉にも独特のツヤと厚みがあって美しい。そもそも「つばき」という名前は、「艶葉木」「厚葉木」という和名が由来であるといわれている。古代の日本では、椿は神聖な植物として大切に扱われてきた。

万葉集の歌には、椿が紫染めの媒染(定着材)として活用されたことが記されている。木は堅く丈夫なため、炭や農具の資材として重宝されたという。果実からは椿油が作られ、食用や整髪料などに用いられた。

主に太平洋側ではヤブツバキ、日本海側ではユキツバキ、その中間地域にはユキバタツバキが育つ。山茶花(さざんか)も同じツバキ科の植物だ。山茶花は椿と違い、花びらが一枚ずつ落ちる。

先述の通り、おしべに特徴をもつ椿だが、おしべが退化して花粉がでない種類もある。これを「侘助(わびすけ)」という。花粉で汚れないため、茶室に飾る花として人気が高い。長い歴史をかけて培われてきた日本文化。その至るところに、椿は息づいている。

取材協力/浜北万葉の森公園

浜松市浜北区平口5051-1(053-586-8700)
園内に約200種ある椿が開花シーズンを迎える2月18日(土)~3月20日(月・祝)に、「万葉椿まつり」を開催。期間中は週末ごとにさまざまなイベントが行われる。3月5日(日)午前10時からは染物体験「椿の模様をつくろう」を実施(500円・事前申し込み制)。