教育

子どもに伝えたい遠州の民話(5)

猫塚―御前崎市御前崎―

(2017年4月6日号掲載)

遠州地方には不思議な民話がたくさん残っています。今回は御前崎に残る「猫塚」のお話しです。

本堂の屋根裏を調べると、猫が傷だらけになって倒れていました。

昔、御前崎に遍照院というお寺がありました。ある日、住職が丘の上から海を眺めていると、沖に流されている一匹の子猫を見つけました。子猫は船の板の上にすがり、荒波に揺られています。かわいそうに思った住職は、漁師に頼んで子猫を助け、寺に連れて帰りました。

お寺で育てられた子猫はすくすくと成長し、住職の言葉を聞き分けるほどになりました。それから10年の月日が経ったある日、一人の僧が「四・五日泊めてくださらぬか」と寺をたずねてきました。住職は快く僧侶を泊めてあげました。

猫塚の像(左)とねずみ塚の像

3日後。寺の猫のもとに、隣の猫がお伊勢参りに行こうと誘いにやってきました。寺の猫はなんとなく住職のことが気がかりで「今は行けないよ」と断りました。隣の猫はしばらく話をした後、重い足取りで帰っていきました。

その夜のこと。本堂の天井裏で激しい物音が起こりました。驚いた住職は急いで本堂に向かいましたが、周りは暗くてよく分かりません。

朝になって住職が再び本堂へ行くと、天井の板の間から血がしたたり落ちていました。びっくりして屋根裏を調べると、寺の猫と隣の猫が傷だらけになって倒れていました。その近くには、犬ほどもある大きさの古ネズミが衣をまとってうずくまっています。

ネズミは旅の僧侶に化けて、住職を食い殺そうとしていたのです。それに気づいた寺の猫は、隣の猫に助けを借りて、二匹でネズミを退治したのです。手当の甲斐なく死んでしまった猫たちは、寺の脇に葬られました。

一方のネズミの死体は、村人たちが海に捨てようと運び出しました。ですが、道中で急に重くなったので、その場に捨て去られました。その後、ネズミは村人の夢に現れ、「われを祀ってくだされば、この地の漁業の守りとならん」と告げました。村人たちはネズミも手厚く葬りました。それぞれの墓は「猫塚」「ねずみ塚」と呼ばれて今に伝わっています。

御前崎ふるさと案内人 曽根竹男さん