グルメ

甘くて華やかな香り

白金色のとんかつの秘密

(2017年6月22日号掲載)

親子丼とんかつ専門 とん唐てん浜松市・高林

赤身と脂のツヤが美しい、白い衣の「とんかつ定食(竹)」1,836円

遠州の人間は、豚肉の味にはちょっとうるさい。養豚が盛んな土地柄で、良質な豚肉の産地だからだ。ところが、どんなに舌が肥えた遠州人も、「とん唐てん」のとんかつには皆、一様に目を丸くする。

「まずは右から二番目を、ひじき塩につけて食べてみてください」

店主の名倉隆さんがそう言って差し出したのは、店の名物「白金色のとんかつ」。その名の通り、なんと衣が白いのだ。とんかつに食べる順番があることに驚かされたが、一口食べるとさらなる衝撃が待っていた。

口の中に広がる、華やかな脂の香り。湧き出る甘い肉汁に、思わず口元が緩んでしまう。しっとりとした肉の食感が心地よく、まるでフワッと積もったパウダースノーを口にした時、スワッと一瞬に溶けて消えてしまうような感じだ。

驚くほど柔らかな「上ひれかつ定食」2,484円

「これが本来の豚のおいしさ。右から二番目は脂と赤味の割合が同じで、肉の味が最もよく分かるんです」

話はさらに名倉流とんかつの奥深さに入っていく。味の秘密は、温度の違う二つの油鍋にある。まずは下ごしらえした肉を、100℃という低温の油で約15分間、じっくりと揚げる。この時間は、厨房に油のはねる音はない。静寂の中、店主は一人、鍋の肉に全神経を集中させる。長時間、徐々に熱を加えることで、脂の旨みを衣の中に閉じ込めるのだ。

「揚げる時間や、油の温度・量がわずかに違うだけで、肉の柔らかさがまったく変わってしまう。お客さんに早く出したい気持ちもありますが、焦りは禁物です」

「とんかつは繊細な料理」と語る店主の名倉さん

仕上げは、160℃の油で50秒間、手早く揚げる。使用する油は昼と夜、それぞれ新しいものに交換する。同じ油を使い続けると、華やかな香りは失われ、衣も黄色くなってしまうという。とんかつ作りにかける、料理人のひたむきな思い。それこそが、白い衣の正体だった。

料理人の道に進んだ名倉さん。当初はホテルで修業し、独立後和食料理店を営む。6年前、とんかつ店として再スタートを切り、2年前に佐鳴台から現在の高林に店を移転した。

「5年をかけて極めた今の揚げ方は天ぷら以上に難しい。とんかつって、実は繊細な料理なんですよ」

店名の由来は「とんかつから、てっぺんになろう」。厨房から時折見える客の笑顔が、何よりの励みになるという。


親子丼とんかつ専門
とん唐てん

053-474-3335
浜松市中区高林2-8-30
営業時間/
11:30-14:00、17:30-21:00
休み/水曜、第3木曜

取材協力/親子丼とんかつ専門 とん唐てん