グルメ

料理人ストーリー

Tomohiko Ogusu ― 小楠智彦

(2015年3月26日号掲載)

香川の原風景を我がふるさとへ。

天ぷらとうどんのセット(960円)。ちく玉天のちくわは香川県から取り寄せている

田んぼの中にポツンとある小屋。飾り気のない小さな店には、昼になると顔なじみの客が続々と集まってくる。この光景は昨日も今日も同じ。そしてきっと明日も繰り返されるだろう。

小楠智彦さんは浜松市浜北区にある「野の香」で、うどんの里・香川の日常を再現している。

30代後半、会社員時代の小楠さんの楽しみは食べ歩き。ある日、その一つとして香川で食べた讃岐うどんが人生を変えることになった。「使命を感じたんです。『これを伝えなきゃ』って」

その後、一念発起して香川へ移住。名店を渡り歩いて修行したり、うどん職人養成学校で学んだり。食べ歩きも続け、1年で1200玉ものうどんをたいらげた。
「おかげで自分の味を見つけました。僕はそれを自分が生まれ育った町に持ち帰ることにしたんです」
なめらかな肌に、キリッとしたうどん。つゆは透明感が高く香しい。気取らず、それでいて品がいいのが野の香のうどんだ。麺をすすり、顔を上げれば太い梁が平屋の広い店を支えているのが見える。

「麺はゆでたてだけ。食材はできるだけ地元の良いものを使いたいと思って、生産者さんを直接訪ねて見つけています。店の梁は大工さんと一緒に香川へ行って仕入れたものです。商品も店も、納得いく形でないと出せませんから」

強さはあるが、威圧感はなくほっこりする。野の香はまさに小楠さんの人柄はそのもの。口数の少ない主人に代わり商品と店が想いを伝え、客の心を捉えている。その証拠に、今日も釜から絶え間なく湯気が上がり、テーブルでは老若男女を問わず舌鼓を打っている。

Tomohiko Ogusu

小楠智彦。旧浜北市出身、42歳。管理栄養士の資格を持つ。ブログでは、今でも続けている食べ歩きのほかに、読書やAKBのライブ報告なども綴っている。

さぬきうどん 野の香(ののか)
麺はゆでたて、天ぷらは揚げたて。だしは化学調味料を一切使っていない自然な味が人気の讃岐うどん専門店。うどんと天ぷらのセット(天ぷらは、とり天、ちく玉天、えび天の3種類から選べる)がメインで価格は960円。ほかに、カレーうどんやきつねうどんなど、1年がかりで仕上げた逸品も見逃せない。
TEL.053-545-9997
浜松市浜北区平口222-1
11:00~14:30(日曜は17:00~20:00も営業)
水曜、第4木曜