グルメ

郷土の味 連載:第2回

ぼくめし

(2015年11月5日号掲載)

“まかない食”発、お手頃うなぎ料理

ぼくめし

写真/彩りにしそや錦糸卵を飾れば目にも鮮やか
(撮影協力 新居町商工会婦人部)

浜名湖畔でうなぎの養殖が始まったのは明治時代半ば。大正時代には養殖池の大造成が進み、養鰻業はこの地の一大産業として発展した。養殖池で育てたうなぎは網で引き上げ出荷したが、中には逃げたり泥にもぐったりする輩も。時々育ちすぎて"棒杭(ぼうくい)"のように太~いうなぎが出てくることがあり、略して 「ぼく」と呼んだ。ぼくは商品価値が低いので出荷せず、おかみさんたちが刻んで煮込んだものを作業員のまかない食に。「ぼくめし」の名は、ご飯に混ぜて食べたことから付いた。

1980年代に入ると、新居養鰻婦人部が"気軽にうなぎを食べられる調理法"の研究を始めた。まかない食だったぼくめしも候補に挙がったが、生から煮るうなぎは臭みが残るのが難点。そこで、柳川にあやかりごぼうを入れて煮たら大好評。こうした活動が評価され、全国婦人水産業従事者グループ活動発表会に静岡県代表として参加。テレビにも出て、ぼくめしは全国区になっていった。

養殖の方法が路地池からビニールハウスに移るとぼくは減り、また生うなぎを調理する人も少ないため、ぼくめしの素材は白焼きへ。熱湯に通した白焼きを甘辛タレで煮た後、油で炒めたごぼうのささがきを加え、味を絡めてから堅めに炊いたごはんに混ぜるのが一般的になった。香りは蒲焼きのようで、甘辛のタレが絡んで美味。ごぼうもよく合う。うなぎの価格が高騰している今、「家族全員の蒲焼きは無理でも、ぼくめしなら白焼きを1枚買うだけで家族みんなが楽しめる」と喜ばれている。

湖西市立新居小学校ではここ数年、総合的な学習の時間に6年生がぼくめしについて学んでいる。新生・郷土の味は子どもたちにも受け継がれていくはずだ。

ぼくめしの思い出

中村淑美さん

元 浜名湖養魚漁業協同組合 新居小組合養鰻婦人部
中村淑美さん

養殖池は水の入れ替えで年に一度は池の底を乾かすのに、泥の中に上手に隠れているうなぎがいるんですよ。人の腕ぐらいあるぼくもいてね。生きたうなぎは切るのが大変だけど、よくダシが出るしコクがあっておいしいの。白焼きはさらっとして少し物足りなく感じます(笑)。 ご飯を酢飯にしてもおいしいですよ。祭りなど人が集まるときにおにぎりにして出すとあっという間になくなりました。婦人会の活動や老人施設訪問などの際にもぼくめしを用意したものです。
今も新居町の5つのお寺を回る「涅槃図巡り」で、ぼくめし弁当を出していると聞きました。“新居の味”として親しまれているのがうれしいですね。

作り方

①ご飯を堅めに炊く。
②白焼きを熱湯に1分通し、2cm幅に切る。
③ごぼうはささがきにして水にさらし、さっと炒める。
④しょうゆ、砂糖、酒を同比率で合わせたタレでうなぎを煮る。タレにごぼうを絡め、味を染み込ませる。
⑤ご飯に④を混ぜて出来上がり。