グルメ

郷土の味(連載:第4回)

お日待ち御膳

(2016年2月4日号掲載)

"絆結ぶ行事"受け継ぐ高膳

この日、用意してくれたお日待ち御膳は
「しいたけ以外すべて舞阪産よ!」

舞阪は昔ながらの漁師町。地域に根付く言葉の一つに「お日待ち」がある。漁船の乗組員や隣組が集まって食事をしたり話をしたりして絆を深める集いの日のことで、「人々が心待ちにする楽しい日」という意味が込められている。正月、五月の節句、旧暦九月の大太鼓祭りの翌日など年に数回、昭和30年代頃まで盛んに行われてきた。今は青年団の行事として受け継がれている。

もう一つ、絆を表す言葉がある。それが、「お椀講」だ。町内の祝い事や葬儀などで200人以上が集まる時は隣組で準備をしたが、その際に「個人で器を用意するのは大変」と、近隣の50軒ほどが共同で椀や高膳、御櫃や大釜を購入、地域で保管していた。この仲間を「お椀講」と呼び、明治時代にはすでに町内各地にあったという。ところが、時代の流れで冠婚葬祭を家で行う機会が徐々に減り、平成10年頃には器の出番が消えていた。

「しょんないで、捨てまいか」と、次々に処分されていく器に「もったいない!」と声を挙げたのが地域の女性たちだ。なんとか集めた50組弱の器に再び日の目を見させたいと、郷土の味を紹介する膳を考えた。これが「お日待ち御膳」だ。

中には安政6年に作られた器も

高膳に並ぶのは炊き込みご飯、汁椀、お平(野菜の煮物)、酢の物、おつぼ(デザート)など。食材は牡蠣、アサリ、青のり、シラスなど舞阪でとれるものを使い、野菜は魚の煮汁で煮るというこだわりもある。

この御膳は平成15年から13回にわたり舞阪文化センターの和室で提供され、評判を得た。もてなすのは「お日待ち御膳の会」。会員は10名ほどだが、はまなこ里海の会、浜のレディース、りんりん会など舞阪を愛する仲間が強力な助っ人となっている。ところが、昨年3月に会場が閉鎖され、継続が困難に。それでも会員たちの「良い物を守りたい」という思いは強く、高膳を並べられる広い和室を探しつつ、新たなやり方を模索している。

待ち遠しかった船の「お日待ち」

日待ち御膳の会 会長 加藤かち子さん
うちは親が漁師だったから、お正月は船主さんが乗り子さん(乗務員)とその家族を「お日待ち」に招待してくれたのよ。子どもたちもみんな招いてくれてごちそうになるの。ご飯、大根の味噌汁、お漬物...今思えば素朴な料理だけど、みんなで集まってワイワイやるのが楽しくてね。おみやげはみかん5個!これがうれしかった~(笑)。夜になると大人たちは芸者さんも呼んで盛大にやってたよ。

今はもう昔ながらのお日待ちはなくなったけど、それでも人が集まる楽しい時間は「お日待ち」って言うよ。お日待ちもお椀講も、"舞阪のいいもの"は絶やしたくないよね。

「お日待ち御膳」を作る仲間たち
(左から)間瀬一子さん、片山峰子さん、石井日出子さん、佐々木尚代さん、加藤かち子さん

風味たっぷり「青のり寒天」のおつぼ
作り方

  1. 鍋に粉寒天と水を入れ火にかける。よく混ぜながら砂糖を少量入れ、沸騰後もさらに2~3分煮る。
  2. 火を止め、青のり(生のり)を 好みの量入れる。
  3. 型に流し入れて固まれば出来上がり。