グルメ

料理人ストーリー

Hideki Sakurai - 櫻井英樹

(2016年4月14日号掲載)

「おいしい」の向こう側へ。今、届けたいコトがある

食す人と虎跑の"今"を表した重箱前菜
「今の私の宝箱」。6,000円コース(税別)の
一品

女性の目に、ふわりと涙が浮かんだ。

「感動しました」

8年前、櫻井英樹さんは料理に「おいしい」を超える感想があることを知った――。

春のやわらかな光を浴び、透き通った重箱の中でキラキラとした輝きを放つ中国料理が3品。櫻井英樹さんが"今"を表現した最新作が出来上がった。

「芽が出て、花が咲いて、実がなる。一の重は新たけのこ、二の重は花畑のフリット、三の重は甘酸っぱい果実で表しました。これは、お食事をされる方の"今"であり、虎跑の"今"でもあります」

料理人として、この料理に込めた明確な思いはある。でも、それを明らかにしないことで食す人の自由な発想を尊重している。

「召し上がっていただいたその瞬間に、お客様が感じたことが正解なんです。それが"今"ですから」

櫻井さんが"今"を伝える料理を生み出す時は不意に訪れる。空間に向けられた視線の先には、食材、調理法、盛り付け、器まで、新作のすべてがビジュアルとして見えているという。調理が始まると厨房に気が張り詰め、一気に仕上げられる。

「料理は生き物ですから、タイミングがずれると逃げたりつまらないものになってしまうんです。その料理の完成形はこの先変わるかもしれないけど、"今"の僕ができる最高の形で仕上げます」

下積み時代、さんざん包丁を握り、飽きれるほど鍋を振り、料理の引き出しをいっぱいにしてきた。その蓄えがなければ、"今"心に浮かぶ料理を即座に形にすることはできなかっただろう。櫻井さんはその腕を武器に、目に見えない"今"を切り取って皿に盛り付けている。

Hideki Sakurai

櫻井英樹。御前崎市出身、虎跑オーナーシェフ。思い付いたことは、すぐに実現したい行動派。「頑張っている人」が大好きで、レストランを開店する料理人のサポートをすることもしばしば。そのため、料理のジャンルを問わずネットワークも広い。

中国料理 虎跑(フーパオ)

嬉しいことがあった日、悔しいことがあった日...、その日の気持ちにフィットする料理が選べる中国料理店。記念日のお祝いは、相談しながらオリジナルコースを組むこともできます。ランチ900円~、ディナーはセットメニュー(1680円~)とアラカルト。価格はすべて税別です。

TEL:053-489-7577

浜松市東区有玉南町1867(浜松毎日ボウル隣接)
11:30~14:00/17:30~21:00
定休日:月曜

取材協力/虎跑