グルメ

建築士×うどん職人

食の空間づくり。

(2016年5月19日号掲載)

いつ、どこで、誰と...。食事を楽しむには料理以外にもさまざまな要素が関係する。今回は、うどん職人と建築士が「食の空間づくり」について意見を交わした。

小楠
今、店に入るとき、屋根見ました?ようやく釘にサビが出て、いい感じになってきました。
新野
建てて6年。小楠さん、設計当初から「ピカピカじゃなくて小屋みたいな建物がいい」って言ってたから、理想に近くなったんじゃない?
小楠
そうですね。建物のイメージは讃岐(香川)の原風景の中にあるベーハ小屋(※煙草の乾燥小屋)です。そもそも香川の風土や文化を伝えたくて店を出したので、この雰囲気でうどんを食べてもらえないんだったら、野の香はやらなかったと思います。
新野
原風景や経年変化を楽しむスタイルは私も好きだから、打ち合わせでも言いたいことはよく分かりましたよ。ベーハ小屋の特徴の越屋根は光や風を入れられるから機能的にも、視覚的なアクセントにも良かったですね。
小楠
新野さんとは、一緒に香川の古材屋や古民家を見て回りましたね。
新野
見るどころか、小楠さん自分で資材を仕入れてましたよね(笑)。梁に使った丸太も。自然の物はぬくもりがあるというか、あたたかみがあるというか。私が木造建築を多く手掛ける理由はそこにあります。

小楠智彦さん(右)
「さぬきうどん野の香」店主。香川で修行した、うどん職人。旧浜北市出身、43歳。

新野達治さん(左)
大正から三代続く「入政建築」代表取締役。木の家づくりを得意とする一級建築士。浜松市出身、57歳。

小楠
その丸太を飾りじゃなくてきちんと構造材に使ってくれて嬉しかったですよ。壁のしっくいも自分たちで塗ったのでムラがあるけど(笑)、ビニールクロスより味があって気に入ってます。
新野
一般住宅のダイニングキッチンでは「一緒にワイワイ」という雰囲気を求める方が多いですよ。昔は母親一人が台所で仕事をしたものですが、今は分担して仕事をしたら、みんなでくつろぐ。食の空間に人が留まるのが主流です。
小楠
飲食店も「居心地」が大事だと思います。良い空間と良いサービスがあってこそ食事が楽しめる。オープンキッチンにした理由も、お客様一人ひとりが心地良く過ごせているかどうかが見えるように。みんなが幸せになる場所になるといいな...と思っています。
新野
あぁ、そうだったんだ。8年の付き合いになるけど初めて聞いたなぁ。実は私も「家をつくることで、その人に幸せになってもらいたい」と思って仕事をしているんだよ。作る物こそ違うけど、ずっと同じ思いだったんだね。