グルメ

郷土の味(連載:第13回)

芋切干し(いもきりぼし)

(2017年2月2日号掲載)

遠州のからっ風が生んだ昔ながらのおやつ

湯気が立ち上る加工所で次々と皮をむく女性たち
金属の枠にピアノ線を張った「ペンペン」という道具。これで蒸した芋をスライスする
網に並べた芋を野外で乾燥させる沖さん。自然の力で甘みを凝縮させる

いつまでも噛んでいたくなる、絶妙な歯ごたえと甘み。サツマイモを蒸して乾燥させた芋切干し(干し芋)は、老若男女問わず根強い人気を誇る昔ながらのおやつだ。

現在は茨城県で盛んに生産されている芋切干し。その発祥は、江戸時代の遠州地域にあるといわれている。御前崎には地元のサツマイモ文化に貢献した、二人の「いもじいさん」の逸話が残っている。

明和3年(1766年)、御前崎沖で薩摩藩の御用船が座礁する事故が起きた。この時、近くに住んでいた大澤権右衛門が船員24人を助け出し、そのお礼としてサツマイモの栽培方法を伝授された。以降、地元でサツマイモの栽培が広まったという。

その約60年後。御前崎の栗林庄蔵という人物が、サツマイモをゆで、包丁で薄く切って干し上げる調理法を考えだした。この作り方は後に、磐田で芋を蒸し上げる方法へと変わり、今に伝わる芋切干しの製法が完成した。

「蒸した芋を、遠州のからっ風に当てて3日ほど干す。ゆっくりと自然乾燥させると、水気が素直に取れるから、自然な甘みが出せるんですよ」

そう話すのは、御前崎市で芋切干しを作っているヤマヒカリ商店の沖孝穂さん。沖さんはサツマイモの栽培から加工・販売まで、1年かけてすべての作業を行っている。芋切干し作りは毎年11月下旬から始まるという。

朝7時半、加工場に集まった人々が、蒸し上がったサツマイモを次々と手に取り、皮をむいていく。冷めると皮が取りづらくなるため、速度が命の作業だ。むき終わった芋は、少し冷まして薄くスライス。1枚ずつ網の上に並べ、屋外で3日ほど乾燥させる。

「芋は乾燥させると、5分の1ぐらいの大きさに縮みます。その過程で余分な水分が飛び、甘味とうまみが凝縮されるんです」

風が強ければ強いほど、芋は乾きやすくなる。そのため沖さんは、時季によってスライスする厚さを変えている。

「きれいにスライスされたものは、見た目がきれいで贈答用にも人気。だけど、形が崩れているものも、糖分が乗っておいしいんですよ」

季節の味覚を求め、販売所にはお客さんがひっきりなしに訪れる。照りつける太陽、水はけのよい土壌、そして強烈なからっ風。遠州の芋切り干しには、自然の恵みがぎっしりと詰まっている。

取材協力/ヤマヒカリ商店