健康

格言で学ぶ漢方-32

春の病は肝(かん)にあり

(2017年3月9日号掲載)

なぜ?春なのに気分が落ち込んでしまう。

気候の変化についていけない
玉嶋貞宏 院長
玉嶋血液内科
漢方診療所

玉嶋貞宏 院長
1958年、兵庫県生まれ。浜松医科大学卒。共立湖西総合病院、聖隷浜松病院を経て2012年に開業。日本血液学会認定血液専門医・日本東洋医学会認定漢方専門医
浜松市中区住吉1-24-1NTT住吉ビル4F
TEL.053-412-0100

春は気温が暖かくなり、心も陽気になる季節です。ところが、診療所には「毎年この時期になると体調を崩す」という患者さんも少なくありません。寒さが和らいで過ごしやすくなるのに、なぜでしょうか?

漢方ではこう考えます。1年の中で気温が低く、日照時間が短い冬は「陰」の季節。反対の夏は「陽」の季節です。その間にある春は、季節が陰から陽へと移り変わる大きな転換点にあります。気の巡りが悪い人は、この変化に体がついていけず不調を感じるというわけです。春は入学や卒業、就職などを機に、新しい環境に身を置く人も多いはずです。この時季に起こるとされる「五月病」は、典型的な例といえます。

気の巡りの悪化による心身の不調は、西洋医学では自律神経失調症と呼ばれています。自律神経は、交感神経と、その反対の働きをする副交感神経とが調和しながら働きます。安静時には副交感神経が優位に働き、緊張・興奮時には交感神経が優位に働いています。バラバラに働くのではなく、シーソーのようにどちらか片方が優位になるのです。シーソーがうまく動けば体調は良いということになります。

日中は交感神経が優位になり、夜は副交感神経が優位になります。これはまさしく「陰陽」の調節と同じと考えられます。一日を「陰陽」でみると、日中は「陽」、夜は「陰」となるからです。

気の巡りの病は、五臓のうち「肝」と大きな関係があります。肝は気・血を全身に巡らせる働きを持つ臓です。気の巡りが悪い場合は、柴胡など、肝の気や血を巡らせる生薬を含む漢方薬を処方して治療します。

敏感な人の中には、災害や怖い事件のニュースを知ると、気分が悪くなってしまうという人もいます。気の巡りが悪くなるのだと思います。そういった方には「なるべく自分の気分に影響を与えるものを避けるように」とアドバイスすることもあります。