健康

60代から増加する

老人性難聴

(2015年2月26日号掲載)

両耳にゆっくり訪れる

水田邦博 先生
【お話】
浜松医科大学
耳鼻咽喉科学准教授

水田邦博 先生

老人性難聴は年齢とともに両耳に起こる難聴です。言葉が聞き取りにくくなるのが特徴で、音が聞こえていても言葉として正確に理解することができません。進行すると音そのものが聞こえにくくなります。60歳代以上に多く、65歳以上の25~40%、75歳以上の40~66%、85歳以上の80%以上が該当するといわれ、中には40歳代から始まる人もいます。両耳に起こり、ゆっくりと進行するため、本人は気づきにくいのです。

内耳の蝸牛管(図参照)には聞こえの感覚細胞が多数並び、細胞の先端には音を感知するための感覚毛が生えています(写真)。ところが、年齢とともに細胞が退化すると感覚毛が抜け落ち、聞こえが悪くなるのです。また、蝸牛管の入り口に近い方で高音を、奥で低音をキャッチしていますが、入り口側から細胞の退化が始まるために高音から聞き取りにくくなります。

周囲の心掛けも大切

耳の構造

原因は主に遺伝的要因と環境因子が挙げられます。残念ながら予防法や治療法はありません。動物実験ではコエンザイムQ10やαリポ酸などの予防効果が発表されていますが、人では臨床結果がありません。

老人性難聴かなと思ったら、耳鼻科を受診してください。鼓膜に穴が開いていたり、耳垢が詰まっていたりすることが原因だったり、腫瘍が隠れていることもあるので診断が必要です。

ほかに原因のない老人性難聴と診断されたら、家族や周囲の人は「少し大きな声でゆっくり話すこと」を心掛けてください。聞き取りにくいことで人と話すのが苦痛になり、孤立することは避けたいもの。補聴器を嫌がる人もいますが、さまざまなタイプがあり、聞こえにくい周波数に合わせて調整できる物もあります。外で人に会う機会が多い方や会話を楽しみたい方は利用されてはいかがでしょう。

浜松医科大学 TEL.053-435-2111(代)