健康

格言で学ぶ漢方-19

五味偏勝(ごみへんしょう)をさける

(2016年11月3日号掲載)

5つの味をバランスよく食べる。

栄養があっても食べ過ぎは毒
玉嶋貞宏 院長
玉嶋血液内科
漢方診療所

玉嶋貞宏 院長
1958年、兵庫県生まれ。浜松医科大学卒。共立湖西総合病院、聖隷浜松病院を経て2012年に開業。日本血液学会認定血液専門医・日本東洋医学会認定漢方専門医
浜松市中区住吉1-24-1NTT住吉ビル4F
TEL.053-412-0100

前回、食べ物には体を温める性質や、体を冷ます性質があるというお話をしました。これを漢方では「四気」と呼びますが、それと併せて重要視しているのが「五味」です。

五味とは、文字通り5つの味覚のことです。生薬や食べ物の味を、酸(すっぱい)・苦(苦い)・甘(甘い)・辛(辛い)・鹹(塩辛い)の5種類に分類し、味によって体に作用する効果が異なると考えられています。五味の働きは次の通りです。

酸味...柔らかいものを固めたり、身体から汗・尿などが漏れ出るものを止めたりする。

苦味...熱を冷ます。余分な水を取り除く。気の高ぶり、咳を鎮静化する。老廃物、病邪を取り除く。

甘味...胃腸の働きを整えて、気や血を補う。体を緩める。

辛味...気や血の巡りを良くする。発汗を促す。

鹹味...体内で固まったものを柔らかくしたり、散らしたりする。

五味は五臓とも対応していて酸は肝、苦は心、甘は脾、辛は肺、鹹は腎に働きかけると考えられています。こうした考え方はあくまで原則的なものですが、漢方薬や薬膳料理は五味を考慮に入れて作られています。

例えば気が不足して元気がない人には、「甘味」の生薬を使うことが多くあります。これは甘味が、胃腸の働きを担う「脾」に働きかけるためです。胃腸の働きを整えることで、食べ物からエネルギーを効率的に取り込み、体内の気の量を増やすことができるようになるのです。

江戸時代の儒学者、貝原益軒は著書「養生訓」の中で「五味偏勝をさける」と記しています。これは「五味をどれかに偏ることなく、バランスよく食べることが健康の元となる」という意味です。

養生訓には「甘いものを続けて食べると、腹が張ってしまい痛む」「苦いものを多く取ると、胃腸の調子を狂わす」といった事柄も書かれています。どんなに栄養があるものでも、食べ過ぎは体の毒となることは今も昔も変わりません。