健康

格言で学ぶ漢方-25

傷寒(しょうかん)に万病あり

(2017年1月12日号掲載)

インフルエンザは汗で追い払う。

麻黄湯が「肺」に働き発汗を促す
玉嶋貞宏 院長
玉嶋血液内科
漢方診療所

玉嶋貞宏 院長
1958年、兵庫県生まれ。浜松医科大学卒。共立湖西総合病院、聖隷浜松病院を経て2012年に開業。日本血液学会認定血液専門医・日本東洋医学会認定漢方専門医
浜松市中区住吉1-24-1NTT住吉ビル4F
TEL.053-412-0100

中国伝統医学のバイブルに「傷寒論」という書物があります。これは中国の後漢末期に張仲景という医師が記した医学書です。書物には病気の診断方法や治療法など、漢方治療の基本的な事柄が体系立てて記されています。

タイトル名の「傷寒」は、当時流行した発熱を伴う急性の伝染病のことです。後漢というと、三国志の時代。具体的にどのような伝染病なのかは分かりませんが、おそらく今のインフルエンザよりもさらに強力な疾患だと考えられます。

現在はインフルエンザのシーズンです。西洋医学の現場では、一昔前まではインフルエンザを治療する際、解熱鎮痛剤を処方していました。ですが、これは東洋医学的に見ると逆効果です。

前回の「太陽病」でも説明しましたが、カゼの始まりは風寒邪が体表に取りつくことで、頭痛が起こったり寒気を感じたりすると考えます。これはインフルエンザも同じです。寒邪が体に取りついている状態で解熱鎮痛剤を処方すれば、体はもっと冷えてしまいます。

漢方でインフルエンザを治療する際、よく使われるのは「麻黄湯(まおうとう)」です。主な生薬の麻黄は、皮膚をつかさどり、体内の水をコントロールする「肺」に働く生薬です。肺の働きを活性化させ、汗をたくさん出すことによって邪を追い払います。

ただし、邪が皮膚に取りついている段階、つまり病気の初期にしか効果がありません。また、たくさん汗をかかせて治療する薬なので、体の弱い人や高齢者には使えません。

一時期、タミフルなどのインフルエンザ治療薬による、子どもの異常行動が問題になりました。麻黄湯にはこの副作用がないため、子どものインフルエンザ治療に有効です。患者の状態によっては、タミフルと併用して治療を行うこともよくあります。