暮らし

遠州のいきもの観察記 Vol.23

落ち葉の下で春を待つ ゴマダラチョウ-胡麻斑蝶-

(2019年2月14日号掲載)

かわいい顔のイモムシ

真冬、落ち葉の下などでじっと春を待つ生きものがいる。ゴマダラチョウという名のチョウの幼虫だ。にょっきり生えた二本の角がチャームポイント。虫眼鏡でその顔をよくよく見れば、頭の両脇についた黒い点のような目がとてもかわいいイモムシだ。羽化すると、黒地に白のまだら模様の翅(はね)を持つ、シックなイメージのチョウになる。

幼虫の食べ物は、湿った場所によく育つ木、エノキの葉。落葉樹であるエノキは、冬にはすっかり葉を落とし、その樹形を枝先まであらわにする。根元に落ち葉が幾重にも重なっている。

ゴマダラチョウの幼虫は、幹の北側、根元から30センチも離れないところにいるという。きっとここにいるはずだ。そう思い、積もっているエノキの落ち葉を一枚一枚めくってみる。直射日光のあたらない北側は、乾燥しがちな冬も湿度を保つのだろう。落ち葉の下のほうは、湿っている。根気よくめくっていると、しばらくして縦の葉脈に沿うようにひっついている15ミリほどの異物を発見。ゴマダラチョウの幼虫だ。越冬中は、枯れ葉そっくりの茶色をしているので、うっかりすると見落としそうになる。場所さえ良ければ、案外、見つかるのがうれしい。

落葉とともに冬支度

夏、卵からかえったばかりの幼虫は緑色をしている。茶色い体は越冬中の色なのだ。

幼虫はエノキの葉をもりもり食べ、脱皮を繰り返して成長する。秋になり、葉が舞い散る頃、幼虫は3度目の脱皮をする。その頃から体色に変化が現れる。ゴマダラチョウの幼虫の冬支度というわけだ。

それまで木の上で生活していた幼虫は、幹を伝い、地面へ降りる。重なる落ち葉にもぐり込むと、お気に入りの葉を探す。しっかりと体を固定したら、長い冬を何も食べずに過ごすのだ。

いよいよ春を迎えると、落ち葉の中から幼虫が動きだす。ちょうどエノキが芽吹く少し前だ。ポカポカ陽気の日、樹皮を丹念に見てみれば、一番に芽吹く柔らかい葉を目指し、えっちらおっちら登っていく幼虫に出会うこともある。

さてさて、そんな春を待ちわびて、今頃ゴマダラチョウの幼虫は、エノキの根元で静かにしていることだろう。河川敷や水辺のある公園などにエノキがあれば、その根元をちょっと探してみよう。もしかしたら小さなイモムシの寝顔に出会えるかも。

文・イラスト 浜松市環境学習指導員 瀬下 亜希