暮らし

LIFE~これが私の生きる道~

野鳥撮影

(2015年9月3日号掲載)

地元だから撮れる!理想の画を求めて

今年最初のチャンスは梅雨明け3日目の早朝。偶然では撮れない、狙いを定めて撮った渾身の1枚

朝6時。空には白い雲だけ。「アオバトは繁殖期に海水を飲む珍しい鳥でね。100羽もの群れで見られる場所は日本で5カ所ぐらい。浜名湖は名所なんだよ」と、青木正男さんはカメラ片手にアオバトを待ち続けている。

30代後半、子供の宿題に付き合って野鳥観察に行ったのが運命の分かれ道。鳥の飛ぶ姿、さえずりの愛らしさにハートを射抜かれてしまったのだ。その後は日本中を飛び回り、国内の鳥全540種のうち5年で450種をウォッチ。さらに写真も撮り始めた頃「北海道の友人に自慢されちゃったんですよ」。そこには記録ではない、ツルの生命力あふれる姿が写されていた。以来、青木さんの撮影旅行は止み、地元の撮影ポイントへ通い続ける日々が始まった。

春:ヒレンジャク(阿多古川)

夏:アオバト(村櫛海岸)

秋:ノビタキ(都田町)

冬:コハクチョウ(鶴ヶ池)

狙うは"浜名湖の宝石"と名付けたアオバト。「虹の空を飛ぶアオバトを撮りたくてね。虹は通えば撮れるけど、雨が降ると鳥は飛ばない。だから山だけ降って、ココは晴れという日を待ってるんだ」と言いつつ今年は少し狙いが違う。アサリの漁場が移動し、偶然にもアオバトの飛来地と並んだのだ。そこで青木さんが思い描いた画は『アサリ漁船を背景に飛ぶアオバトの群れ』。浜名湖でしか撮れない理想の一枚だ!

ところが青木さんの夢を阻むのはアオバトをエサとするハヤブサ。アオバトが警戒しているうちにアサリ漁は終わり、船が帰ってしまう日も珍しくない。「条件がそろうまで、通うしかないんだよ」。そう言って差し出した一枚の写真には奇跡が詰まっていた。青い空と白い雲、朝日を受けて輝く湖、バランスよく停留するアサリ船、山を背景に飛ぶアオバトの群れ。
「まぁ70点かな(笑)。もう30羽ぐらい飛んでると最高なんだけどねー」。
今年の渾身の一枚。青木さんの目は喜びと悔しさと、次回への闘志がみなぎっている。

青木正男さん、73歳。白い野球帽がトレードマークの「日本野鳥の会遠江」会員。午前中は鳥の撮影に忙しいが、空いている午後を使って人生初となる"男の料理"に挑戦中。