暮らし

LIFE~これが私の生きる道~

DIY

(2016年1月7日号掲載)

「埋め合わせ」で円満解決。

「よく『器用ですね』って言われるんですけど、そうじゃないんです」。大岩貢さんが作った家具は製品と見間違うほどの完成度。だからつい、そう褒めたくなる。

大岩さんが中学生のころ、ものづくりの面白さを教えてくれた先生がいた。本立てやベッドなど、自分が作りたいものを自分で作る喜びは代え難いものだった。大学や社会人時代にDIYを楽しむ時間はなかったが、会社をリタイアしてしばらく経った2006年の夏、お隣さんから静岡県立森林公園の「木工体験館」を紹介してもらい、約45年ぶりにものづくりを再開した。まずは1000枚収納できるCDラックを作ることから始まり、以後、テレビボードを作ったり妻の嫁入り道具の椅子を直したり。また、娘にせがまれ松本民芸家具風の本棚や、4人の孫たちが成長するごとにベビーチェストや踏み台、学習机をプレゼントしてきた。

これらはすべて大岩さんの完全オリジナル。インターネットで図面を検索することもなく「私の“がらくた作り”は夜ベッドに入って頭の中で図面を引くことから始まります」。過去の失敗と成功が頭の中を駆け巡る。最初、木の接合は手軽なネジと接着の併用だったが、今ではホゾ組、蟻組、滑り蟻桟などプロの手法に。職人のようにノミやカンナは扱えないが、専用ジグを作るなどして工夫している。つまり、大岩さんは単に手先が器用なのではなく、ち密な計算をした上で家具を作っているのだ。

木は一度切ったら戻せない。反りや縮みも永遠の課題だ。慎重に組み立てても隙間ができることは珍しくない。「そういうときは“埋め合わせ”をすればいいんですよ。人付き合いでもあるでしょ。まぁ、円満解決…妥協ですね(笑)」。繊細かつ臨機応変、大岩さんが作る家具には人柄が表れている。

孫が絵付けした本立て、娘婿リクエストのテレビボード、妻の嫁入り道具の椅子。
すべて家族の毎日とともにある

Profile

大岩貢さん。72歳、DIY歴9年。およそ週2日、静岡県立森林公園の木工体験館に通う。そのほか卓球やスポーツジム、男性合唱、音楽など趣味も多彩。