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LIFE~これが私の生きる道~

城跡巡り

(2016年2月4日号掲載)

見てください、この堀!城跡のワクワク感をみんなに。

埼玉県にある杉山城。
計算し尽くされた複雑な縄張りは美しさすら感じる

世は空前の「城ブーム」。世界遺産の姫路城や、天空の城・竹田城(ともに兵庫県)には毎年、大勢の観光客が詰めかけている。掛川市役所に勤める戸塚和美さんは、20年以上、中世の城郭を調べているアマチュア研究者の一人。「好きな城は?」と聞いてみると「杉山城」という、甚だマニアックな答えが返ってきた。

杉山城……。埼玉県にあるこの城は、天守もなければ、石垣もない。それどころか誰がいつ築いた城なのかもよく分からない謎の城である。ただ一つ、はっきりしているのは城の痕跡が非常によく残っていること。その造形美から「中世城郭の教科書」とも呼ばれ、マニア垂ぜんの城となっている。

「杉山城は小高い丘を削り取って作られた土づくりの城です。何といっても堀の曲線が美しく、複雑に入り組んでいて迷路みたいになっている。天守や石垣はありませんが何度行っても感動しますね」

地元・遠州を拠点に、県西部地域の城跡をリサーチしている戸塚さん。地元の掛川城や高天神城の発掘調査にも携わってきた。城の特徴を比較するため、全国各地の城跡にも足を運ぶ。豊臣秀吉が朝鮮出兵の際に築いた「倭城(わじょう)」を研究するため、朝鮮半島の南端を調べ歩いたこともある。

韓国にも日本の城が残っている。
写真は朝鮮出兵の際に築かれた
韓国の熊川(ウンチョン)城

「実は城って日本に3万カ所ぐらいあるんですよ。支配者が築いた城以外にも、寺院を要塞化したものや村人たちが隠れ家として作ったものとか、バリエーションもいろいろある。当時の人々がたくましく生きていたことに思いを馳せると、現代に生きる我々も強く生きねばと実感しますね」

もともとは市の文化財課に勤務していた戸塚さん。現在はIT関係の部署に籍を置くが、そこで培った知識をもとに城の情報を整理したデータベースを作成中だ。今後はライフワークとして、初心者でも城跡の面白さが分かるナビゲーション・アプリを開発したいと考えている。

「天守がないお城でも、土塁(土の城壁)の迫力や巨大な堀の魅力が分かるとすごく楽しいですよ。もちろん軍事施設だった場所ですから、戦争や平和について考えることも大事。スマホなどを活用して、私が普段、城跡で感じているワクワク感を大勢の人にお伝えする仕掛けを考えてみたいですね」

河原小石を使った石垣が
特徴的な横須賀城(掛川市)
巨大な堀跡が残る
高天神城(掛川市)
戸塚さんは掛川城の
発掘調査にも携わった

Profile

戸塚和美さん。54歳。掛川市出身。織豊期城郭研究会の会員として地元を中心に城郭の調査に当たる。共著に「戦国時代の静岡の山城」「倭城を歩く」(いずれもサンライズ出版)など。趣味はプログレッシヴ・ロックのレコードとCD収集。

城郭研究者の仲間と出版した著作