暮らし

遠州のいきもの観察記 Vol.6

秋の風物詩「鷹柱」は必見!サシバ-差羽-

(2017年9月28日号掲載)

上昇気流をつかまえる

爽やかな秋晴れの朝、いそいそと浜松市北区の山へ向かう。浜松市域を一望できる高台へ。秋の風物詩「鷹の渡り」を見るためだ。浜松市の上空は、タカの仲間・サシバが南へ渡るルート上にあるのだ。運が良ければ「鷹柱」も見られるかもしれない。

夏の渡り鳥であるサシバにとって、日本は生まれ故郷だ。春になると東南アジアからやってきて、里山で子育てを行う。エサはカエルやヘビなど。秋になる頃にはヒナもすっかり大きくなり、みんなとともに暖かな南へと向かう。

渡りの途中、サシバは山の斜面などに発生する上昇気流に乗って空高く舞い上がる。最初の数羽が上昇気流をつかまえると、後から来たサシバもそれに続く。翼をめいっぱい広げ、大きく旋回。次第に何十羽ものサシバが天に向かい、巨大な螺旋を描きはじめる。その姿はさながら竜巻のよう。これが秋の季語ともなっている「鷹柱」だ。

普段は縄張りを持ち、たった一羽で大空を舞うサシバ。しかし渡りの時には、各地から大勢が集まってくる。生態系の頂点に立つ孤高のタカが、集団で空高く飛ぶ様には心から圧倒される。

数千㎞を旅するために

ところで、なぜサシバは鷹柱を作るのだろう?それは上昇気流に乗ることで、力を使わずに高度を稼ぐことができるからだ。高い場所から滑空すれば、エネルギーを節約しながら飛行距離を伸ばせる。日本から越冬地までの距離は数千㎞。この長旅を全うするため、上昇気流を見つけては上昇と滑空を繰り返し、はるかかなたを目指すのだ。

「鷹柱を見るために、山で待つこと数時間」なんていうのはよくあること。それだけに、出会えた時の喜びはひとしおだ。青空にポツンと点が現れ、見る間に複数となる。大きさはカラス程度だが、遠目には白っぽく見える。細長くてスマートなフォルムの翼、縦縞のある喉、「ピックィー!」という独特の甲高い声。見慣れたトビではなく、「サシバだ!」と分かった時の感動たるや言葉に表せない。

サシバは環境省レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。生息環境の減少が原因とされる。いつまでも、鷹の渡りを楽しめる自然を残したいと思う。

文・イラスト 環境学習指導員 瀬下 亜希