暮らし

遠州のいきもの観察記 Vol.9

水辺に映える大型のカモ カワアイサ-河秋沙-

(2017年12月14日号掲載)

緑色に輝く頭

モノトーンの冬の水辺をあでやかに賑わせる渡り鳥のカモたち。そのなかに、ほかのカモよりも一回り大きなサイズで、水辺にひときわ白く映える鳥がいる。カワアイサのオスだ。日本で見られるカモの中では最大。緑色の光沢を放つ頭と体の白とのコントラストが美しい。秋沙(あいさ)とは秋が去った頃やってくる鳥を意味するとも言われ、古くは万葉の時代から使われている言葉だ。

オスのそばで泳ぐのは、茶色の頭にグレーの体のメス。冠羽と呼ばれる茶色の羽毛が、たてがみのようだ。雌雄ともに赤いくちばしがスッとのび、数羽の群れで川面に浮かぶ姿はどこか気品を感じさせる。

カワアイサには「のこぎり歯カモ」という別名もある。くちばしにギザギザの小突起が並ぶからだ。水中に潜り、このくちばしで魚を獲る。カワアイサは大きな湖沼や幅の広い河川などにやってくる。浜名湖へ注ぐ都田川はその魚種の豊富さからか、毎年カワアイサが訪れる。多い時には数十羽の群れが見られる。

冬は〝勝負服〟にチェンジ!

渡ってきたばかりのカワアイサの群れを見るとメスばかりで、オスの姿が少なく見える。それもそのはず、オスは繁殖期以外はメスとそっくりな色をしているのだ。繁殖期のオスの、緑光沢と白色はいわば婚活のための「勝負服」。メスにアピールするための姿なのだ。渡ってきてしばらくは、オスが繁殖期の羽に生え替わる時期。だから顔に茶色と緑の両方の羽毛がまだらに混じるものが見られる。変な模様のカワアイサがいたら、それは換羽中のオスかもしれない。正月を迎える頃には、ほとんどのオスは、衣替えが終了する。

シベリア方面の夏は短い。それらの地域で子育てするカワアイサは、冬の間につがいの相手を見つけなくてはならない。繁殖地の雪解けとともに北に帰るとすぐ子育てに入るからだ。日本で過ごす冬はカワアイサにとって重要な恋の季節なのだ。

越冬地での水辺に浮かぶ様子からは想像しにくいが、カワアイサは繁殖地では、樹洞に巣をかまえる。ヒナがかえり、水辺に降りるようになると、お母さんカワアイサの大きな背中にはヒナたちが競い合って乗る姿が見られるという。春のそんな風景を想像しながら、都田川に浮かぶ、冬のカワアイサたちを眺めるのも楽しい。

文・イラスト 環境学習指導員 瀬下 亜希