暮らし

遠州のいきもの観察記 Vol.10

真冬のさなかに卵を産むニホンアカガエル -日本赤蛙-

(2018年1月25日号掲載)

小雨の水辺に鳴き声が

朝には氷が張り、落ち葉が霜できれいに縁取られるような真冬。遠州地域では1月中旬から2月頃、早々に冬眠から目覚め、産卵を始めるカエルがいる。ニホンアカガエルだ。その名の通り、体の色は赤茶色。目の後ろに続く焦げ茶色のひし形模様と背中の両脇に通る筋が、全体的にシャープな印象をかもしだす。

大人のカエルになると森や雑木林で暮らし、産卵のときには田んぼや休耕田など、水深10センチほどの浅い水辺にやってくる。カエルといえばやはり雨。産卵は、乾いた凍てつく夜ではなく、キーンとした寒さが和らぎ、しとしとと雨が降るような湿った夜に行われることが多い。

森のシルエットを背景にして手前にひろがる水辺のそこここから「ククククク...」と優しい声が聞こえてくる。アカガエルが集まっているのだ。鳴いているのは全てオス。メスにアピールしている。暗闇のなか、オスは動くものに反応し、メスだと思ってそれに抱きつく。自分よりひとまわり大きいサイズのメスの背中に乗っかると、両手をメスの脇に通し、離してなるものかと抱きしめる。その姿勢のまま、メスが産んだ卵の上にオスが精子をかければ受精完了だ。

里山のカエルの中では一番乗りの産卵。だから広い水辺を独占できる。生きものの活動が静かな真冬だからオタマジャクシを狙う敵も少ないというわけだ。

早起きしたらもうひと眠り

小鳥の声が響きはじめる頃、水辺は朝の静けさを取り戻す。しかしそこには、にぎりこぶし大の卵塊がいくつも産み落とされている。卵塊は、透明なゼリー状の膜で覆われた小さな卵が500〜3000個ほどくっついてできている。ひと冬にメス1匹が産む卵塊は一つという。つまり卵塊の数だけ母蛙がいるということになる。

冬一番に早起きしたアカガエルは、産卵を終えると再び冬眠し春を待つ。ひと仕事を終えたあとの二度寝は、さぞかしぐっすり眠れることだろう。

ニホンアカガエルは県絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。遠州地域では丘陵地付近の休耕田や湿地などで、その姿を見ることができる。しかし、農地整備や宅地開発などの影響を受け、産卵可能な水辺環境は減っている。

アカガエルが暮らせるような自然が残る遠州地域を、いつまでも大切にしたいと思う。

文・イラスト 環境学習指導員 瀬下 亜希