暮らし

遠州のいきもの観察記 Vol.22

冬景色にほんのり彩りを添える赤い鳥 ベニマシコ -紅猿子-

(2019年1月31日号掲載)

愛鳥家をひきつける赤い鳥

「赤い鳥」。そのフレーズにはなぜか、えも言われぬ魅力がある。それに会いたくて、明け方から完全防寒姿でヨシ原へ。葉は落ち、茎のみが乾いた冬の風にゆれている。褐色の風景に身を潜め、静かにその時を待つ。

突如、頭上をかすめ、目の前の草むらに勢いよく飛び込む小さな飛翔物。ほんの一瞬のできごとにもかかわらず、その物体に赤みを感じる。おお!来た!冬景色に灯をともすように現れた赤い鳥、ベニマシコだ。猿のような赤い顔を指し、「紅猿子」と書く。愛鳥家にも人気の高い冬鳥だ。全身が赤みがかるが、とりわけ目元とおなかが赤い。白黒の翼との対比が赤みをいっそう引き立てる。

長めの尾羽でバランスをとり、セイタカアワダチソウの種や、木の新芽などをしきりについばんでいる。続けてもう一羽が現れた。今度はメスだ。さっきのとは全く違い、地味な茶色い姿。赤い色をしているのはオスだけなのだ。

軽やかでかわいい地鳴き

「フィッフィッフィ...」ほどなくして控えめだけれど軽やかな印象の音が聴こえはじめる。「フィッホッ...、フィッホッ...」しばらくすると2音の組み合わせとなる。ベニマシコの声だ。いつの間にかもう1羽が合流し「フィッホッ...」が重なり合う。サラウンドで響く軽快な音は、どんよりした寒空を、楽しげな空間へと一変させる。

この時期、多くの小鳥から聞こえてくるのは「地鳴き」と呼ばれる声だ。繁殖期に求愛などのために出す「さえずり」に対し、地鳴きは、普段出す声のこと。「チッチッ」など地味な音を出す小鳥が多いなか、ちょっと変化をつけた、かわいい地鳴きを聴かせてくれるのがベニマシコなのだ。

遠州地域では、天竜川など大きな川の河川敷、またダム湖周辺などで見られる。ただし、行けば必ず出会えるというわけではない。彼らは餌場から餌場へとこまめに移動しているからだ。さらに複数羽のベニマシコの中から、きれいな赤色のオスをバッチリ見つけられるどうかは運次第。人々の心をつかんでやまない理由はそんなところにもあるのだろう。

春には、青森や北海道など北のほうへ帰っていく。向こうで子育てをするためだ。遠州では冬限定の赤い鳥。「フィッホッ」の声をたよりに探してみては。

文・イラスト 浜松市環境学習指導員 瀬下 亜希