暮らし

遠州のいきもの観察記 Vol.26

新緑の風景に響く優しい声シュレーゲルアオガエル -シュレーゲル青蛙-

(2019年5月9日号掲載)

外国風の名前だが、日本にしかいない

カエルの声といえば真夏の夜のうるさいほどの大合唱というイメージではないだろうか。ところが春、早ければ3月の終わり頃から山里の湿地や田んぼなどで、優しい音色を響かせるカエルがいる。

若葉が美しい棚田へ行き、上段から眼下を望むと、田おこしが始まったばかりの田んぼが広がっている。微風に乗って地面から沸き立つように聞こえてくるのはコロロロロ、コロロロロと、まるで連続して泡が弾けるような優しい音色。周りの山々に反響し、谷あい一帯が何層にも重なる音で満たされていく。

この声の主がシュレーゲルアオガエルだ。見た目はニホンアマガエルにそっくりだが、目の前後の黒色模様の有無などで見分けがつく。黒色がないほうがシュレーゲルだ。外国風の名前だが、本州から九州に分布する日本固有種だ。その名は研究者シュレーゲル氏にちなんでつけられている。ちなみにニホンアマガエルのほうは、国外にも分布する。

樹上性のカエルだから体の色も葉っぱと同じ緑色。敵から身を守るためのカムフラージュだ。

姿の見えない恋の歌合戦

春から夏にかけては繁殖期。鳴く姿を一目見ようと音のする方へ近づいてみる。遠くでは優しく聞こえた音色も、近くではカッカッカッ!と案外キレの良いよく通る音であることに気付く。ただし、人の気配を感じると一斉に鳴き止んでしまう。しばらくジッと息をひそめ、再び鳴き始めるのを待つ。不思議なのは、その声から察するにかなりの数がいるはずなのに、鳴く姿がまったく見当たらないこと。それもそのはず、彼らは土中で鳴いているのだ。普段は草木の上で虫などを取って暮らすが、繁殖は浅い土中で行うからだ。のどをふくらませて一生懸命鳴いているのはオスだけ。姿の見えない大合唱は、メスを誘うオスたちの恋の歌合戦でもあるのだ。産卵はオスがメスの背中に乗って行われる。メスは自分が出す分泌物と卵、それにオスの精子を後ろ足でよく混ぜ合わせて泡状にする。

このカエルは、北区や浜北区磐田市の山辺の田んぼや水辺で見られる。田んぼの畔にこぶし大の白い卵塊が見えていることもある。街中でも佐鳴湖公園などではその声を聴くことができる。新緑の風とともにカエルの優しい声を堪能してみては。

文・イラスト 浜松市環境学習指導員 瀬下 亜希