暮らし

遠州のいきもの観察記 Vol.32

ユニークな姿の人気者アケビコノハ -木通木葉-

(2019年11月7日号掲載)

イモムシ人気ナンバーワン

細い山道を軽快に下っていると、枝にからみついたツル植物が目の前を通せんぼ。手でよけようとしたとき、ギョロリとした視線に気付き、手元を二度見る。そこにいたのは、イモムシ人気ナンバーワンを誇るアケビコノハという蛾(ガ)の幼虫だ。人気の秘密は、いかにもユーモラスなその表情。頭でっかちで、幼児が描いたような不思議なフォルム。そこに黄色くてゆるい輪郭の大きな目玉、中心部には黒い瞳がウルウルと潤んでいる。一般にイメージする細長いイモムシとは様相がだいぶ異なる。眼状紋(がんじょうもん)と呼ばれる目玉模様は天敵である鳥からの攻撃防御の役割があるとされている。ほかのイモムシにも眼状紋を持つものがいるが、アケビコノハはその見せ方が独特だ。頭をグッとおなか側に折り曲げ、胸とくっつけるようにして、あたかも大きな顔面かのように見せている。そしておしりの先を高く上げる。

アケビコノハの幼虫は、アケビ科などの植物の葉をもりもり食べて育つ。終齢幼虫とよばれる蛹(さなぎ)になる前には体長6センチほどとなり、俵型のふんも直径5ミリ、長さ8ミリほどのビッグサイズになる。やがて口から出した、白くて細い糸を使い、数枚の葉を束ねて繭をつくりはじめる。ずいぶん大雑把な印象のつくりだが、そのほうが葉のなかに紛れられるということなのだろう。そこに身を隠し、何も食べずに数日するとある日、体に大きな変化が起こる。全身真っ黒になり、防水型の蛹となるのだ。その状態で成虫になる日を夢見て時を過ごす。が、そんな身動きのとれない時も外敵からの防御策はある。繭に刺激を与えると、中の蛹が体を左右に振り、「反撃」を試みるのだ。ただの葉っぱと思っていたものが奇妙な動きをするため、確かにびっくりする。

枯れ葉そっくりな成虫

さて、こんな奇妙な姿の幼虫時代を持つアケビコノハ。成虫は、誰しもがこの生きものの命名に納得するであろう姿だ。それはまさに「木の葉」なのだ。茶色い枯れ葉というほうが正確かもしれない。近くでじっくりみても、枯れ葉にしか見えない。成虫は夜間に果樹の汁を吸って暮らしている。

冬は成虫で過ごすアケビコノハ。食草があれば、近くの公園など身近なところにも生息する昆虫だ。落ち葉に紛れ、冬をやり過ごす姿を探してみては?

文・イラスト 浜松市環境学習指導員 瀬下 亜希