暮らし

遠州のいきもの観察記 Vol.34

気品漂うおしゃれな姿のカモ ヨシガモ-葦鴨-

(2020年1月23日号掲載)

天敵を見分ける能力

早朝、防寒着を着込み、山沿いのため池をそっとのぞいてみる。いた、いた。ナポレオンがかぶる帽子にそっくりな頭の形をしたカモ。その名はヨシガモ。首には黒のチョーカー風の模様。翼の付け根付近にある長い羽はきれいに円弧を描いて垂れ下がる。自分をアピールする飾り羽だ。全体に気品が漂っている。ちなみに美しく着飾るのはオスでメスは地味な茶色。シベリア方面から日本の水辺へ冬越しのために飛来し、このいでたちでメスに求愛する。

さて、そんなヨシガモが朝からいたのは、水辺ではなく、岸の上。十数羽が地面をついばんでいる。望遠鏡でよく見ると雑草の葉などを食べている。平穏な食事のひとときだ。この空気を一変させたのは、群れから少し離れたところにいた一羽。突如、慌てたように斜め上へ直線的に飛んで逃げた。その瞬間、ほかのヨシガモも全て一斉に飛んだ。その羽音から鬼気迫る緊張が伝わってくる。さては天敵のタカが現れたか?と空を見上げるが、晴天の冬空は、雲すらも見当たらない。振り返ると、大きなシイノキの横枝に何か見える。タカの仲間ハイタカだ。やっぱり。

この十数分後、別の猛禽が現れた。ノスリという翼の幅が太めのタカだ。上空を「ピーエー」と鳴きながらゆったりと舞っている。にもかかわらず先ほどと違い、カモたちは平気な顔で水辺に浮かんだまま。ノスリの主な餌はネズミなどでヨシガモが襲われる確率は低い。なんとカモは、危険なタカと、そうでないタカを瞬時に見分けているようなのだ。鳥の観察をする人でもノスリとハイタカをすぐ見分けるには経験値が必要だ。

実は最初のハイタカが餌とするのは小鳥が多く、カモを襲うことは少ないはず。それなのにヨシガモが逃げ出したのには訳がある。ハイタカはカモを狙うオオタカと同じハイタカ属という仲間。つまり姿や飛び方はオオタカとよく似ているのだ。

常に警戒を怠らない

水辺でカモは頭を背中に埋め、ウトウトし始める、と思いきや、よく見るとその目はパッチリ開いている。ボーッと水面に浮いているように見えるが、実際は警戒を怠らず、常に危険を見極めながら暮らしているのだ。

ヨシガモは、浜名湖とその周辺の水辺や河川で見られる。初心者でも観察しやすいのがカモの良さ。この冬、ナポレオンハットのヨシガモを探してみては?

文・イラスト 浜松市環境学習指導員 瀬下 亜希